前回の東京モーターショーで不意打ちのごとく、ゴードン・マーレイデザイン社とのパートナーシップによる四輪車開発を表明したヤマハ発動機(以下、ヤマハ)は、今回もゴードン・マーレイデザイン社が持つ「i streamコンセプト」を採用した四輪車を出展した。鋼管パイプとコンポジットパネルの接着の組合わせにより、1つのプラットフォームでシティコミューターからスポーツ、SUVなどさまざまなバリエーション展開を可能であることがi Streamコンセプトの売りである。前回は2シーターのスポーツコミューター「MOTIV」での提案であったのに対し、今回はスポーツカーのコンセプト「SPORTS RIDE CONCEPT」が公開された。
外形寸法が全長3800mm×全幅1720mm×全高1170mm、車重が750kgというコンパクトなスポーツカーながら存在感がある。ブースを訪れた際に、以前の記事でインタビューさせていただいた同社デザイン部門トップの長屋明浩氏がちょうどいらしたので話を伺った。
長屋氏によると、今回のSPORTS RIDE CONCEPTは、バイクのようなクルマをデザインするというコンセプトのもとに作ったという。二輪車のヤマハが作る四輪スポーツカーなのだから、スポーツバイクのような感覚への期待があるはず。なので、「Drive」ではなく、あくまでも「Ride」であるべきと。デザインにおいてもこれを意識してデザインしたことで、通常のスポーツカーとは異なる形に仕立てている。
ミッドシップスポーツカーのようなシルエットながら、幾つかのパーツが組み合わされて全体の形となっているような意匠構造は、確かにスポーツバイクをイメージさせるものがある。これにより、ボディサイズの大きなスーパーカーのミニチュアのようになっていないのが、個性が大事なスポーツカーとして好ましく感じる。特徴的なドアの膨らみは、バイクのタンクをイメージしたものだそうだ。
興味深いのは、室内のスイッチに(楽器の)ヤマハオーディオと同じものが使われるなど、このクルマにおいても「Two Yamahas, One Passion」が生かされていることだ。2つのYAMAHAにあるアイデンティティーやらしさ、ブランドとしての意志などを大事にしていく姿勢が、この先量産車になった時の長期的な強みとなるように感じる。前回のMOTIV同様、パワートレインなどの詳細仕様は一切明かされなかったが、今後が楽しみなプロジェクトである。
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