CarとAutomobileという視点で見ると、マツダは「Be a Driver.」を掲げることからも、Carに特化したようなブランドだ。
「魂動デザイン」での一通りのラインアップも完成した今回の東京モーターショーでは、「RX-VISION」と「越 KOERU」の2台のコンセプトカーが公開された。中でもRX-VISIONは、今回最もフォトジェニックなコンセプトカーだっただろう。ロングノーズ、ショートデッキというFRスポーツカーの伝統的なプロポーションを持つが、ロータリーエンジンを前提とした低いフードに合せるようにキャビン部の高さも低く抑えられ全高はわずが1160mmという低さだ。底面積では似たようなサイズの「シボレー・コルベット」や、少し大きな「フェラーリ・F12」の全高がそれぞれ1230mmと1273mmであることと比べても、RX-VISIONの低さが目立つ。これにより前後方向の伸びやかさや幅方向のワイド感が強調され、最近のハイパフォーマンスカーやスーパースポーツカーでは珍しいものではなくなってきた20インチの大径ホイールも、より大きな存在感を感じさせるスタイルができている。
このコンセプトカーは社会的なビジョンを示すものではない。マツダのアイデンティティーとしてロータリーエンジンの開発を止めないという意思表示である。ヤマハのSPORTS RIDE CONCEPTと同様に詳細仕様は公表されていないが、想定エンジン名を「SKYACTIV-R」と名付けている。RX-VISIONにはもう1つ、商品としてかつてのRX-7、もしくはその上のクラスでのスポーツカーが成り立つのかをこれから見ていくために、世の中に向けた「この指とまれ!」としての役割もあるだろう。
昔から個性的なモデルが多いフランス車であるが、いまだにドイツ車とは異なる視点を感じる。今回のショー会場で気になったのは、ルノーの新型「トゥインゴ」とシトロエンの「C4 CACTUS」だ。
ルノーはデザインコンセプトに、ユーザーのライフステージを「LOVE」「EXPLORE」「FAMILY」「WORK」「PLAY」「WISDOM」という6つにセグメントし、それぞれのステージのためにデザインされたクルマを提供する「サイクル・オブ・ライフ」というデザインコンセプトを打ち出している。日本に導入されたモデルでは、現行の「ルーテシア」が「LOVE」、「キャプチャー」が「EXPLORE」に対応し、「PLAY」に属するモデルが新型トゥインゴとなる。「PLAY」という表現に合うように、形や色、マテリアルの表面処理など、コスト要件が厳しい小型車ながら手を掛ける所、割り切ってカットするとろのメリハリが付けられている。
新型トゥインゴは、メルセデス・ベンツのスマート・フォーフォーとプラットフォームを共有する成り立ちだ。リヤエンジン・リヤドライブなのもスマートと同様。新型トゥインゴをリアから見るとボディの外に張り出すようにテールランプが配置されていて、リヤタイヤが踏ん張った感じを見せるあたりは、元はFFながら、ラゲッジルームにミッドシップでエンジンを置き直した、かつての異形モデル「ルノー5ターボ」をイメージしているのかな? などとつい想像してしまう。
従来のトゥインゴは2ドア車であったが新モデルは4ドアとなる。これにより日本の路上で見かける機会も従来モデルより多くなるであろうか。
もう1台の注目フランス車であるシトロエンのC4 CACTUSは、何と言っても他のどのクルマとも似ていない。「元ネタ」は「フランクフルトモーターショー2013」で発表されたコンセプトカー「CACTUS」であるが、コンセプトカーのイメージがほぼ保たれたまま量産化されている。乗り心地やクルマとしてのユニークさがブランドのアイデンティティーであることをよく分かっていて、他社も含めたトレンドとは関係なく時代背景にあったユニークさを追求している姿勢を、量産車となったC4 CACTUSからは感じる。
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