大企業への1社依存状態から脱しようともがきはじめた当初、児島社長は「自分たちが作っている電池が強みだと思っていた」そうだ。「電池の2次加工をやっている会社だ」と思い込んでいるから、「電池を売り込める企業はどこだろう」というように思考が固定されてしまい、突破口が見つからなかったという。
しかしなぜ今まで自社が選ばれてきたのか、という理由をさまざまな角度から考えたときに、製品ではなく「レーザー溶接技術」の要素技術に自社の強みがあると気づいた。これは大手企業の元で、品質改善サークル、合理化提案などの要求に応えて仕事をする中で、自然と技術力が磨かれていたおかげだという。
もしかしたら、中小製造業の技術者は、自分ができることを当たり前だと捉えてしまっているのかもしれない。高度成長期の1社依存の体制には問題もあったかもしれないが、大手企業が町工場の技術を育ててくれた側面もある。「自社が持っている要素技術に気付き、それを強みとしてアピールすることができれば、要素技術は他の製品にも転用できます」と、児島社長の言葉は力強い。
最近では、薄板精密溶接技術を新たな部品の試作、開発に使えないかという問い合わせが増えているという。今後は製品試作を請け負うだけではなく、企業がこれまで不可能としてきた課題に対し、解決できるソリューションや設備を提案していく。工数削減の提案や高品質で安定した溶接ができる設備販売、アフターメンテナンス、技術指導もしていく予定だ。
三郷金属工業の場合、1社依存の危機から抜け出す際に単に事業を広げるのではなく、あえて自社の要素技術の活用に集中したのが功を成した。3年間で3億円減った売り上げを、2015年度は1億円増やせる見込みだ。さらに量産化に対応するため、2012年11月にインドネシア現地法人を設立。2014年には台湾国内の販売、および海外販売の拠点としていくために台湾に支店を設立した。
三郷金属工業は、レーザーのように鋭く世界に向けて出ていく。
雑誌の編集、印刷会社でDTP、プログラマーなどの職を経て、ライターに転身。三月兎のペンネームで、関西を中心にロボット関係の記事を執筆してきた。2013年より電子書籍出版に携わり、文章講座 を開催するなど活躍の場を広げている。運営サイト:マイメディア
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