オープンイノベーションやコラボレーションなどが広がる中、中小製造業でも必要になる機会が多いNDAについて解説する本連載。今回は前回に続き、中堅・中小企業がNDAを結ぶに当たり留意すべき点を説明します。
江戸 健太郎(えど けんたろう)
大江戸モーター 代表取締役社長。小さいけれど技術力に優れたモーター企業の創業者。通称、えどけん。
矢面 辰夫(やおもて たつお)
業界最大手の自動車メーカーであるCFGモーターズの新規事業開発部門に所属。やり手。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
さて、オープンイノベーションなどが広がる中、中小製造業やモノづくりベンチャーでも必要性が増している秘密保持契約(NDA)の結び方を解説する本連載ですが、まず前回までの内容をおさらいしておきましょう。
電気自動車用の小型モーターの開発に成功した大江戸モーターは、大手自動車メーカーのCFGモーターズ(担当者は矢面氏)から「当社の次世代電気自動車用モーターで採用を検討したいので一度打ち合わせをしませんか」とのオファーを受けました。大江戸モーターにとって、自動車業界大手のCFGモーターズとのコラボレーション(協業)は大きなビジネスチャンスであり、社長の江戸氏は上記オファーを受けることとしました。そうしたところ、矢面氏から第一回目の打ち合わせまでにNDAを結びたいということで、NDAの契約書のひな型が送付されてきました。
江戸氏は、受け取った契約書を頑張って読んでみましたが、普段使うような言葉とは違い、何が問題で、何に気を付ければよいのかさっぱり理解できませんでした。では、江戸氏はどうすべきでしょうか。
さて前回は、江戸氏が何をすべきかということについて「秘密情報の定義」について説明しました。具体的には、自社(大江戸モーター)が相手方(CFGモーターズ)にどのような形式・方法(有体物、電子データなど)で秘密情報を開示するかをあらかじめ想定しておき、こうした想定の下で開示される情報が「秘密情報」に含まれるかを検討し、含まれないならば定義規定を修正する必要があるということを説明しました。
今回からはこれらの議論をもう少し進めて「NDAにおける二大義務」について解説していきます。具体的にはNDAにおける二大義務には「秘密保持義務(開示範囲の制限)」と「秘密情報の目的外使用禁止義務」がありますが、今回はこの内の「秘密保持義務」について説明したいと思います。「秘密情報の目的外使用禁止義務」については次回説明します。
なお、前回も記載した通り、本稿では、NDAの一般的・共通的な条項についての解説は市販されている書籍に譲り、「中堅・中小企業が大企業と協業(コラボレーション)を検討するという場面」において、NDAを結ぶにあたってどのような点に気を付けるべきか、の点にしぼって解説します。
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