NDAにおける二大義務の1つ「秘密保持義務」とは何か?いまさら聞けないNDAの結び方(6)(3/4 ページ)

» 2016年03月18日 12時00分 公開
[柳下彰彦MONOist]

自社も秘密保持義務を負うことの確認

 それでは、江戸氏がこの第3条、第4条において確認すべき点はどういうところになるでしょうか。

えどけん

今回のNDAは当社の新型小型モーターについての情報開示なのだから、秘密を守るべきなのはCFGモーターズのはずだな。


 果たしてそうでしょうか。まず、江戸氏に確認して欲しいことは、第3条1項、2項で「甲および乙は」と記載されている点です。つまり、「甲は」とも記載されているので、自社(大江戸モーター)も秘密保持義務を負うということです。従って江戸氏としては、CFGモーターズから開示された秘密情報に触れる自社の技術スタッフに対し、同社とNDAを締結していることを周知し、CFGモーターズの秘密情報を社内で厳格に管理すること、外部に漏えいをしないようにする十分に注意すること、を指示する必要があります。

 なお、仮に、コラボレーションの実現可能性に関する大江戸モーターとCFGモーターズとの打ち合わせや協議において、秘密情報と呼べるべきもの(新型小型モーターの技術情報)が大江戸モーターからCFGモーターズだけに開示され、その逆、すなわちCFGモーターズから大江戸モーターに対して秘密情報と呼べるものが開示されないという場合は、第3条1項、2項の「甲および乙は」を「乙は」と修正する必要があります※)

※)秘密情報を双方が開示しあうのか、それとも片方のみが開示するのか、について検討が必要な点については、第4回の連載「大手との協業、NDAを結ぶ前に『目的の明確化』が必要な理由」の「秘密情報を開示するのはどちらか」の項をご参照ください

秘密情報の開示が例外的に許される条件のチェック

 次に、江戸氏がチェックすべきは、秘密情報の開示が例外的に許容されるのはどのような場合か、ということです。以下、例外的に秘密情報の開示が許容されている場合について説明します。

第3条2項のチェック

 第3条2項には「甲および乙は、事前に相手方から書面による承諾を得た場合を除き、秘密情報を第三者に開示又は漏えいしない」と記載されています。この記載から分かるように、第三者への開示は、全面的に禁止されているのではなく、事前に相手方の書面による承諾を得れば可能です。

 ここで、江戸氏がチェックすべきことは、以下の2点です。

  • 相手方の「事前の」承諾となっていることのチェック(開示されてしまってからの「事後」承諾では意味がありませんよね)
  • 「書面での」承諾となっていることのチェック(口頭でもいいとすると後になって書面での証拠がないというトラブルになりかねません)

 CFGモーターズのひな型では、上記2点がきちんと記載されていますので、問題はないと考えてよいと思います(本契約はCFGモーターズの秘密情報も保護の対象となっており、CFGモーターズの立場上も「事前の書面承諾」という条件は必要なので、ひな型に問題がないのは当然といえば当然なのですが……)。

 筆者の経験上、ほとんどのNDAの契約のひな型は第3条2項のように記載されているのですが、ごくたまに「甲および乙は、事前に相手方に通知をした場合を除き、秘密情報を第三者に開示又は漏えいしないものとする」というような条項が記載されたひな型を見ることもあります。

 この条項の問題点がどこにあるか分かりますか?

 答えは、「相手方(秘密情報を開示した側の)に事前通知するだけでよく、相手方の承諾が必要とされていないこと」と「通知も書面に限定されておらず、口頭での通知でも構わないと解釈されること」の2点です。このような条項となっている場合は、CFGモーターズのひな型(第3条2項)のように修正する必要があります。

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