自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。第1回となる今回は日本有数の企業城下町である大阪府守口市で、レーザー加工・精密溶接を手掛ける三郷金属工業の取り組みを紹介する。
日本の大手メーカーを中心に生産の海外移転が進んだ影響で、多くの中小製造業は依然として厳しい状況に置かれている。生産の国内回帰が進む動きもあるが、その先行きは不透明だ。従来の大企業との密接な関係で成立していた経営の方針転換に、頭を悩ませ続けている中小製造業も多い。
こうした厳しい状況が続く一方、自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業も存在する。本連載ではこうした中小製造業にフォーカスし、その取り組みやビジョンについてお届けする。
第1回で紹介するのは、日本有数の企業城下町である大阪府守口市でレーザー加工・精密溶接を手掛ける三郷金属工業だ。典型的な大企業への1社依存体制でモノづくりを行っていた同社は、こうした状況からの脱却に向け自社の強みを活用して新規顧客の開拓に取り組んだ。窮地の中で見つけた自社の強みは、長年大企業に育ててもらった要素技術の中にあったという。同社の3代目社長を務める児島貴仁氏に話を聞いた。
三郷金属工業が得意としているのは、レーザー溶接・抵抗溶接など、高度な技術精度を要求される精密溶接。主な取引先はパナソニックだ。リチウム電池端子溶接加工分野で世界シェアトップ30%(2013年度)を占めるパナソニックから、端子溶接を一手に請け負ってきた。
炊飯器から携帯電話、電子レンジや冷蔵庫などの大型家電製品まで多くの商品に使われるボタン型電池。そして住宅用火災警報器や電気・ガス・水道メーターに使われている円筒形の電池など、三郷金属工業の持つ精密溶接技術は、目に見えないところで私たちの生活を支えている。世の中の多くの人は三郷金属工業の社名を知らないかもしれないが、私たちは日常生活の中で同社の技術の恩恵にあずかっている。
「大きさも形状も異なるさまざまな電池に、端子やリード線を溶接してきました。その数は累計15億個以上にもなるでしょう」と三郷金属工業の3代目社長を務める児島貴仁社長は語る。
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