パナソニックの電池生産を担う町工場が、要素技術で世界を目指す!イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(1)(4/5 ページ)

» 2015年08月07日 08時00分 公開
[松永弥生MONOist]

積極的な情報発信で、見込み客を80社にまで拡大

 こうした積極的な情報発信のおかげで、展示会に初出展した2012年は2〜3社の新規顧客を獲得。さらに翌年は12社に増えた。現在の見込み客は80社にのぼるという。今では三郷金属工業の技術力を知った企業から、問い合わせや相談を持ち込まれるようにもなった。大手生活総合メーカーが、自社開発部品の溶接が行えず、困って三郷金属工業に持ち込んできたこともあるという。

 なぜ三郷金属工業は、他社が不可能と諦めた溶接もできるのか。児島社長は「失敗の経験を蓄積しているからです」と言い切る。同社にはこれまで15億個に及ぶ電池に端子をレーザー溶接してきた実績がある。試作や実験の段階で数え切れない失敗を重ね、製品の品質を一定に保つ技術を確立してきた。

 初めての案件はどうすれば成功するのか。その方法は、誰も知らない。それは三郷金属工業の技術者にとっても同じだ。しかし同社は「何をしたら失敗するのか」ということを経験から学んでいる。

三郷金属工業の溶接マシン。最適な溶接を行うにはこうしたマシンの調整に関するノウハウも欠かせない

 マシンの調整、レーザー照射の時間、温度など、条件の組み合わせは無限大となる。やみくもに試していては、いつ正解にたどり着くのか分からない。けれど、失敗要因を取り除いていけば、成功率が高い方法を絞り込むことができる。失敗事例を多く持てば持つほど、ポイントを絞って試作に挑める。結果として成功に至るまでが早くなる。

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