こうした積極的な情報発信のおかげで、展示会に初出展した2012年は2〜3社の新規顧客を獲得。さらに翌年は12社に増えた。現在の見込み客は80社にのぼるという。今では三郷金属工業の技術力を知った企業から、問い合わせや相談を持ち込まれるようにもなった。大手生活総合メーカーが、自社開発部品の溶接が行えず、困って三郷金属工業に持ち込んできたこともあるという。
なぜ三郷金属工業は、他社が不可能と諦めた溶接もできるのか。児島社長は「失敗の経験を蓄積しているからです」と言い切る。同社にはこれまで15億個に及ぶ電池に端子をレーザー溶接してきた実績がある。試作や実験の段階で数え切れない失敗を重ね、製品の品質を一定に保つ技術を確立してきた。
初めての案件はどうすれば成功するのか。その方法は、誰も知らない。それは三郷金属工業の技術者にとっても同じだ。しかし同社は「何をしたら失敗するのか」ということを経験から学んでいる。
マシンの調整、レーザー照射の時間、温度など、条件の組み合わせは無限大となる。やみくもに試していては、いつ正解にたどり着くのか分からない。けれど、失敗要因を取り除いていけば、成功率が高い方法を絞り込むことができる。失敗事例を多く持てば持つほど、ポイントを絞って試作に挑める。結果として成功に至るまでが早くなる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.