三郷金属工業の高い溶接技術力を示しているのが「EVバッテリー向け極薄アルミ×極薄銅レーザー溶接技術」だ。同技術は2015年1月に近畿経済産業局主催の優れた製品や技術を表彰する「関西ものづくり新撰2015」に選定された。
昨今、自動車業界では電気自動車(EV)の普及に伴い、アルミの需要が増加している。EVに搭載するのバッテリー端子をアルミにすれば、省電力、低燃費が可能になり、結果として車の走行距離が伸びるからだ。さらにアルミは、軽く強い金属だ。従来、鉄などで製造していた部品に使用すれば、強度を維持しつつも重量を半分近くまで軽量化できる。こうした背景からアルミの採用が進んでいる。
しかしアルミは溶け落ちしやすく、ゆがみやすいという特性を持つ。そのためバッテリーの端子に利用するような薄いアルミに、レーザーで穴を開けないようギリギリの所で止める溶接を行うには高い技術力が求められる。さらに銅などの異素材を最適な条件で溶接するにはノウハウも必要だ。熱や時間のかけ方にポイントがあるが、材質によって微調整が必要になる。マニュアルには書かれていない、まさに職人の技術とノウハウが欠かせない。
これを可能にするのが「EVバッテリー向け極薄アルミ×極薄銅レーザー溶接技術」だ。「同じ機械を持っていても、うちと同じ製品は作れない」と児島社長と語る。
同社は2003年から「TPMS(Tire Pressure Monitoring System:タイヤ空気圧監視システム)」に使われる電池の製造も開始している。回転するタイヤ内部に装着するため「最も過酷な環境で使われる車載電子部品」とも言われているという。人命にかかわるだけに、品質管理が非常に高いレベルが要求される。
つまり三郷金属工業はこうした品質管理の経験とノウハウの蓄積がある。精密溶接は強度や気密性といった品質を安定させるのが難しく、歩留まりが低いといわれる。しかし同社が新たに開発した溶接技術は、月産100万個を安定的に供給できる品質管理体制を構築。関西ものづくり新撰2015ではこの点が高く評価された。
こうした溶接に関する高い技術を持つ三郷金属工業だが、現在に至るまでには多くの苦労があったという。
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