インダストリー4.0で日独の協力関係はあり得るのか(前編)ハノーバーメッセ2015(2/2 ページ)

» 2015年04月17日 06時00分 公開
[三島一孝MONOist]
前のページへ 1|2       

日本のスマートファクトリーは何を目指すか

 インダストリー4.0はドイツの目指すスマートファクトリー政策だが、実は日本でもスマートファクトリーおよび新たなモノづくりを実現しようという動きが生まれている。安倍政権の成長戦略の原動力として発足された「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の「革新的設計生産技術」プログラムだ(関連記事:アベノミクス第3の矢を実現する10のイノベーション【後編】)。同プログラムでプログラムディレクターを務める佐々木直哉氏が、日本の取り組みを紹介した。

 日本は2011年から貿易赤字が続いているが、その要因の1つにグローバル競争での製造業の弱体化があるとされている。「革新的設計生産技術」プログラムは、これらを解決するためには新たなモノづくりの手法や基盤を作ろうというものだ。

photo 内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム プログラムディレクターの佐々木直哉氏

 佐々木氏は「プロジェクトは大きく分けて2つの狙いがある。1つは、先進的な設計システムと高度な生産システムをオープンイノベーションプラットフォーム上で作り出すこと。もう1つが『イノベーションのスタイル』というものを生み出すことだ」と述べる。

 全体として目指すのが「Delightful(楽しい、大きな喜び)」を実現するモノづくりだ。「従来の日本企業は良い品質のモノを安く作るということに長けていたがこの領域は製造技術の発達や新興企業の成長で苦しくなっている。見えているニーズを追い掛けてそれを満たすモノを作るだけでは本当の満足は得られない。見えないニーズに踏み込んだモノづくりが必要だ」と佐々木氏は語る。

 これらを実現するために実際に研究を進めていくのが以下の3点だという。

  1. 超上流デライト設計手法
  2. 革新的アジャイル生産技術
  3. イノベーションスタイルの確立

 超上流デライト設計とは、設計の初期段階から製品として顧客に与える価値を想定して自由にそれらを試行錯誤しながら設計できる手法のことだ。また革新的アジャイル生産技術とは、これらの自由な試行錯誤をさまざまな形で実現できる生産技術のことを指すという。これらを組み合わせることで、顧客の求める期待を上回る製品を柔軟に迅速に作り出すことができる環境を目指すという。

photo 超上流デライト設計手法と生産技術を組み合わせたワークフローのイメージ(クリックで拡大)※出典:SIP

革新をシステムとして生み出す

 さらにイノベーションスタイルについては、従来「イノベーションは勝手に人が生み出すもの」という発想になりがちだった日本において、どのようにイノベーションをシステムとして生み出すかということを目指すもので、1つのスタイルを作ることで、多くの企業において継続的にイノベーションを生み出していける状態を目指すという(関連記事:“革新”を「天才が生む」と考える日本、「組織で生み出す」と考える世界)。

 佐々木氏は「ドイツのインダストリー4.0をはじめとして、世界中で新しいモノづくりの手法を生み出そうという動きが活発化している。日本として新たな手法を確立し世界に発信できるようにしたい」と語った。

◇     ◇     ◇     ◇

 前編では、ドイツと日本の政府によるモノづくりへの取り組みを紹介した。後編では、インダストリー4.0に関連する日独の企業の発表と、それぞれの立場を語ったパネルディスカッションの様子を紹介する(後編に続く)。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.