ただの“環境対応”で終わらせない、製造現場に適応するカーボンソリューション[関西]製造業カーボンニュートラル展(1/3 ページ)

2025年5月14~16日、インテックス大阪で「関西Factory Innovation Week 2025」が初開催された。本稿では、構成展の1つである「製造業カーボンニュートラル展」に出展した企業の中から注目の製品やサービスを紹介する。

» 2025年06月25日 06時00分 公開
[松永弥生MONOist]

 日本有数の製造業集積地、大阪で初開催となった「関西Factory Innovation Week 2025」では、カーボンニュートラルへの対応をテーマに掲げた「製造業カーボンニュートラル展」が大きな注目を集めた。脱炭素に向けた施策が求められる一方で、導入ハードルの高さや効果の“見える化”、既存設備との整合性など、企業が抱える課題は依然として多い。

 展示ブースでは、太陽光PPA(電力購入契約)モデルや小型水力発電、省エネ型ポンプ、遮熱塗料、放射冷却素材、再生紙製造装置といった多様なアプローチが提示されていた。いずれの企業も共通して訴えていたのは、「導入コストをどう抑えるか」「効果をどう数値で示すか」「どれだけ既存環境に適応できるか」という3点である。

 現場の温熱環境を改善しながらCO2排出を抑える、企業ブランディングやESG評価にも資する──。カーボンニュートラルは単なる環境対応にとどまらず、「経営そのもの」に深く関わるテーマとして捉え直されている。その最前線を、出展各社の取り組みから読み解く。

「[関西]製造業カーボンニュートラル展」の会場は、連日多くの人出で賑わった 「[関西]製造業カーボンニュートラル展」の会場は、連日多くの人出で賑わった[クリックで拡大]

発電機能付きカーポート――しろくま電力

 しろくま電力は、太陽光発電とカーポートを融合させた「しろくまカーポート」のモデルを展示した。発電設備の所有は同社が担い、電力は長期契約で販売する、第三者所有型のPPAモデルを採用している。

 しろくまカーポートは、駐車場の屋根としての役割を果たしながら、上部に設置された太陽光パネルで発電を行う。商業施設や工場敷地などに導入することで、日除け/雨除けによる快適性と脱炭素への貢献を両立できる。企業側には初期投資や維持管理の負担が一切なく、電気代のみで導入が可能である。

 契約期間中の電気料金は固定されるため、価格変動の影響を受けにくく、コスト管理が容易になる。実際に導入された商業施設では、雨天時の来店数が約30%減から15%減に改善されるなど、集客効果も報告されている。

 さらに、EV(電気自動車)の普及を見据え、EV用充電器を備えたモデルの開発も進行中で、1年以内の提供開始を予定している。再エネ導入に対するハードルを下げながら、企業の脱炭素経営と快適な利用空間の創出に貢献する製品として注目を集めている。

太陽光発電とカーポートを融合させた「しろくまカーポート」 太陽光発電とカーポートを融合させた「しろくまカーポート」[クリックで拡大]
PPAより導入障壁が低いPPS(電力小売)の導入事例 PPAより導入障壁が低いPPS(電力小売)の導入事例[クリックで拡大]出所:しろくま電力

捨てていた水で電気を生む――三相電機

排水を再利用して発電する「小型水力発電ポンプ」[クリックで拡大]

 モーターとポンプを製造する三相電機は、排水を再利用して発電する「小型水力発電ポンプ」を展示した。これはポンプ利用の“逆転の発想”だ。水の落差と流量を利用して電力を生み出す省エネ装置である。

 ビル空調などで生じる冷却水の排水を活用し、羽根車を水車のように回転させてモーターを駆動。落差10~21m、毎分300~450l(リットル)の流量があれば、最大約750Wの電力を自家発電できる。これは蛍光灯7本分に相当する出力であり、従来は廃棄されていた水をエネルギー資源として再活用できる点が評価されている。

 省エネとCO2削減が求められる中、既存設備に後付け可能なこの仕組みは、企業の環境対応を支援する有力な選択肢となる。

 また、展示会では、水耕栽培や養殖向けの気体溶解装置「サンソルバー」も紹介された。高濃度酸素水を生成することで、作物の根や魚の生育を助ける装置である。「エネルギーと環境の両立を図る提案だ」と三相電機の担当者は語った。

落差10~21m、毎分300~450l(リットル)の流量があれば、最大約750Wの電力を自家発電できる[クリックで拡大]出所:三相電機
水耕栽培や養殖向けの気体溶解装置「サンソルバー」[クリックで拡大]
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