世界最大級の食品製造総合展「FOOMA JAPAN 2025」で行われたフードテックセッション「食産業のグローバル化と共創の加速」から、アンロックス 代表取締役 CEOでSKS JAPANファウンダーの田中宏隆氏の講演の模様を紹介する。
世界最大級の食品製造総合展「FOOMA JAPAN 2025」(2025年6月10〜13日、東京ビッグサイト)において、フードテックセッション「食産業のグローバル化と共創の加速」が行われ、UnlocX(アンロックス) 代表取締役 CEOでSKS JAPANファウンダーの田中宏隆氏が「フードテック最先端トレンド〜加速する食のAI化とCESから見える食産業の未来・日本の可能性・これから求められる視点とは?」と題して講演した。その模様をダイジェストで紹介する。
田中氏はパナソニックを経て、マッキンゼー・アンド・カンパニー、シグマクシスで成長戦略や新事業開発、ベンチャー協業などに携わり、2017年からグローバルフードテックサミット「SKS JAPAN」を主宰。2023年にはアンロックスを立ち上げ、テクノロジーを通じた日本の食農産業の活性化やコミュニティーづくりの最前線で活躍している。
国内の食農産業は114兆円の規模があるとされる巨大マーケットだが、カロリーベースの食料自給率は40%を下回り、労働環境なども含め産業の持続性の課題もある。さらにAI(人工知能)化の波も押し寄せ、よりグローバルな視点でフードテックのトレンドを把握する必要性が増している。
田中氏は「グローバルでは米国、欧州が大きなマーケットだが、その次に注目されているのが日本だ。日本人は人口が減少し、価格は上がらず、マーケットとして魅力的ではないと思われているかもしれないが、世界からは『美味しくて、健康的で、サステイナブルという3拍子揃った日本の食は非常に魅力的で、GDPは世界第4位の依然大きなマーケット』だとみられている。日本には眠っている技術や文化がまだたくさんあり、新たな形で輸出できるはずだ」と食農産業の大きな可能性に言及した。
一方で田中氏、日本の食料自給率はカロリーベースだけでなく肥料や飼料、種子まで入れると実質的に10%を下回っており、労働環境や収益性の問題から生産者の事業承継問題などもあるとし、「グローバルにおいても食品産業は1000兆円の価値を生んでいる一方で、1200兆円のコストがかかっているという試算もある」と指摘。その上で、「こうした問題をテクノロジーを使って解決しようという動きが強まっている」とフードテックの重要性を述べた。
田中氏は「食に起因する社会課題」と「食の多様化」という2つの大きな潮流が食の進化をドライブしていると見る。特に「海外でもロンジェビティ(健康長寿)が非常に注目され始めている。そして、生きるために食べるのではなく、健康にフォーカスした医食同源の考え方や体験なども含め、より心と体の豊かさにつながる多様な価値を持つようになってきた。つまり、食農は、観光やウェルネス、エンタメ、教育などさまざまな産業の結節点になる可能性を持っている」と食の進化が求められている理由を訴えた。
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