安倍政権が推し進める経済再生政策の「第3の矢」を実現する上で重要な役割を担っているのが、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」だ。前編では、年間予算がそれぞれ数十億円に達するSIPの10のプログラムについて、「SIPシンポジウム」の講演内容に沿って5つのプログラムの概要を説明した。後編では、残り5つのプログラムについて紹介しよう。
安倍政権が推し進める経済再生政策の「第3の矢」を実現する上で重要な役割を担っているのが、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」だ。縦割り行政による弊害をなくした府省横断型の施策であり、日本の経済・産業競争力にとって重要な10の課題がプログラムとして選定されている。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど、内燃機関を動力源とする機器の性能向上を目指すべく、次世代の燃焼技術の開発に向けた取り組みとして「革新的燃焼技術」というプログラムが設けられた。プログラムディレクター(PD)は、トヨタ自動車 エンジン技術領域 領域長の杉山雅則氏が務め、平成26年度(2014年度)予算として20億円が配分されている。シンポジウムでは、サブPDを務める日本自動車部品総合研究所 専務取締役 古野志健男氏がプログラムの概要について説明した。
近年、電気自動車や燃料電池車など、内燃機関を主な動力源としない自動車の開発・普及に向けた取り組みが進んでいる。しかし、古野氏は「今後30年に渡って、世界の自動車の半数以上は動力源として内燃機関を使用し、石油エネルギーの50%を消費すると予測されている。よって、より性能の高い次世代の内燃機関を開発することは、環境問題や自動車の性能向上に貢献する重要な課題」と説明する。
現在、内燃機関の熱効率は約39%が最高値となっているが、同プログラムでは最大熱効率が約50%の性能を持った、乗用車用の小型内燃機関の開発を目標としている。ガソリン燃焼、ディーゼル燃焼、制御など、次世代の内燃機関の開発に必要な要素技術ごとに研究開発チームが設けられ、チーム間で研究成果を共有しながら効率の良い運営を行っていくという。また、こうした自動車に関しての持続可能な産学連携の研究開発体制の構築もプログラムの目標に組み込まれた。
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