インダストリアルデジタルBUが日立全体のケイパビリティーを高める「のりしろ」に日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌(5)(1/3 ページ)

日立の製造業としての側面を色濃く残すコネクティブインダストリーズ(CI)セクターに迫る本連載。第5回は、CIセクターをはじめ日立の“強い”プロダクトを中核とした「トータルシームレスソリューション」の推進役であるインダストリアルデジタルBUをクローズアップする。

» 2025年01月31日 08時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 近年の日立製作所(以下、日立)が躍進を続ける原動力となっているのが「Lumada」に代表されるデジタルソリューションだ。日立は既にIT企業として広く認知されており、そのデジタル技術を基にさまざまな企業にITソリューションを提供している。しかし、Lumadaの真価は、日立自身が製造業として培ってきたOT(制御技術)やプロダクトにITを掛け合わせることで、製造業をはじめとする顧客企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を可能にする点にある。

 ここまでの連載で紹介してきた通り、コネクティブインダストリーズ(CI)セクターには、日立インダストリアルプロダクツ、日立産機システム、日立ハイテクなど強いプロダクトを展開する子会社がある。そしてCIセクターが、これらの強いプロダクトをデジタル技術でつないで現場や経営の課題を解決する「トータルシームレスソリューション」を提供する上で重要な役割を果たしているのがインダストリアルデジタルビジネスユニット(BU)である。

連載『日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌』

 日立の事業を構成する3つのセクターのうち、同社の100年以上の歴史の中で培ってきたモノづくりの力を中核にIT(情報技術)×OT(制御技術)×プロダクトの施策を推進しているのがコネクティブインダストリーズ(CI)セクターである。本連載『日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌』では、日立の製造業としての側面を色濃く残すとともに、デジタルやグリーンなどとの連携によって成長を目指す多彩な事業を抱えるCIセクターの強みについて、それぞれの事業体の特徴や生み出す新たな価値を中心に紹介する。

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ロボティクスSI事業に注力

 日立の決算発表におけるインダストリアルデジタルBUのセグメントは「インダストリアルデジタル」に対応しており、2024年度連結業績見通しにおける同セグメントの売上高見込みは3900億円となっている。

 インダストリアルデジタルBUは、日立の強いプロダクトとOT、ITを掛け合わせてLumadaに代表されるデジタルソリューションとして展開することを事業の柱としている。プロダクト、OT、ITの間に横たわる「際(きわ)」を乗り越えてつなぐトータルシームレスソリューションの推進役であり、インテグレーター的な役割も果たしている。

インダストリアルデジタルBUは、CIセクターにおけるLumadaの推進役となっている インダストリアルデジタルBUは、CIセクターにおけるLumadaの推進役となっている[クリックで拡大] 出所:日立

 インダストリアルデジタルBUの前身は、日立が2016年4月に従来の製品別のカンパニー制から、サービス主体の事業群とプロダクト主体の事業群で構成される新しい事業体制に移行したときに誕生した産業・流通BUである。2019年4月からは、成長分野に位置付けた5つのセクターが設けられ、このときに産業・流通BUはCIセクターの前身であるインダストリーセクターの傘下に入った。そして2023年4月には、産業・流通BUからインダストリアルデジタルBUに名称を改めている。

 同BUが足元で最も力を入れているのがロボティクスSI事業だ。日立はJRオートメーション(JR Automation Technologies)をはじめ、ロボットやラインビルディングの関連企業の買収を続けており、北米を中心に日本や欧州などでロボティクスSI事業を拡大するための基盤整備を精力的に進めている。

 2024年7月には、製造/物流分野向けのロボティクスSIを中核とした自動化/最適化の協創拠点として、羽田空港に隣接する「Automation Square HANEDA」(東京都大田区)と、京都リサーチパーク内に置く「Automation Square KYOTO」(京都市下京区)を開設した。東西にロボティクスSIの協創拠点を展開することで、コンサルティングを含めた構想段階からトータルシームレスソリューションを通じて顧客とともに課題解決に取り組む協創型ラインビルディングによる最適な自動化の提案を進めていく考えだ。

ロボティクスSI事業の協創拠点となる「Automation Square HANEDA」と「Automation Square KYOTO」 ロボティクスSI事業の協創拠点となる「Automation Square HANEDA」と「Automation Square KYOTO」[クリックで拡大] 出所:日立


 次ページからは、日立 執行役常務でインダストリアルデジタルBUのCEOを務める森田和信氏のインタビューをお送りする。

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