展示会や営業“だけ”ではダメ B2B製造業が認知されるための戦略間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(24)(1/4 ページ)

コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第24回のテーマは「営業の網羅性」だ。

» 2025年02月21日 08時00分 公開

 コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第24回のテーマは「営業の網羅性」だ。

 B2B製造業における営業活動の根幹は、いかに潜在顧客に自社の存在を認知してもらうかにある。従来の展示会出展や既存顧客への営業活動は重要な施策だが、これらのアプローチだけでは市場全体の潜在顧客へのリーチには限界がある。この課題を補完する手段としてWebサイトの活用が注目されているものの、効果的な運営には専門知識や継続的な投資が必要で、成果が表れるまでに時間を要する。

 これらの状況を踏まえると、顧客の購買行動プロセスを深く理解した上で、展示会や直接営業、Webマーケティングなど、複数の手法を組み合わせた統合的な認知拡大戦略を構築することが不可欠だ。

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展示会と直接営業だけではチャンスを逃す

展示会出展と直接営業。両方ともにメリットはあるが、一方だけではカバーしきれない[クリックして拡大] 出所:テクノポート

 B2B製造業において、展示会や直接営業は重要な顧客接点であるが、それだけでは潜在顧客の多くにリーチできず、大きなビジネスチャンスを逃している可能性がある。

 展示会では、業界関係者との偶然の出会いや新たな商談の機会を得られる一方で、来場しない企業へのアプローチが不可能である。また、直接営業は既存のネットワークを生かして効率的に商談を進められるものの、自社を認知していない企業への営業には大きな障壁がある。

 このように展示会と直接営業のみでは、業界内の一部の企業にしかアプローチできず、市場全体をカバーできない。特に、これまで接点のなかった企業や、現時点でニーズが顕在化していない企業に対しては、情報が届かず、潜在的な事業機会を取りこぼすリスクが存在する。

購買行動の仕組み

購買行動のモデル[クリックして拡大] 出所:テクノポート

 購買行動とは、消費者や企業が商品やサービスを選び、購入に至るまでのプロセスを指す。このプロセスを理解するため、マーケティングの歴史において数多くのモデルが体系化されてきた。

 最も基本的なモデルであるAIDA(注意、関心、欲求、行動)は、消費者が商品を認知してから購入するまでの心理的変化を段階的に示している。また、記憶の要素を加えたAIDMA(注意、関心、欲求、記憶、行動)は、より長期的な購買意思決定プロセスを説明するフレームワークとして知られている。

 デジタル時代の到来により、消費者行動は大きく変化した。オンラインでの情報収集や比較検討が当たり前となり、AISAS(注意、関心、検索、行動、共有)やAISCEAS(注意、関心、検索、比較、検討、行動、共有)など、より現代的なモデルが登場している。さらに、DECAX(発見、関係、確認、行動、経験共有)のように、購入後の体験共有まで含めた包括的なモデルも提唱されている。

 これらの購買行動モデルは、時代や着目点は異なるものの、全て「認知」から始まるという共通点を持つ。つまり、いかなる優れた商品やサービスであっても、ターゲットに認知されなければ購買の検討対象にすら入らないのである。AMTUL(認知、記憶、試用、本格的使用、忠誠心)のように、ブランドロイヤルティーの形成過程を示すモデルにおいても、最初のステップは「認知」である。

 このように、購買行動における「認知」の重要性は、デジタル化が進んだ現代においても変わることはない。むしろ、情報過多の時代だからこそ、いかにして効果的に認知を獲得するかが、マーケティング戦略の成否を左右する重要な要素となっている。企業は、オフラインとオンラインの両方のチャネルを効果的に活用し、ターゲット層への確実な認知獲得を目指す必要がある。

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