展示会や営業“だけ”ではダメ B2B製造業が認知されるための戦略間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(24)(3/4 ページ)

» 2025年02月21日 08時00分 公開

Webサイトを扱う難しさについて

Webサイトのメリットとデメリット[クリックして拡大] 出所:テクノポート

 Webサイトは、企業の強力なコミュニケーションツールとして広く認知されている。24時間365日、自社を知らない潜在顧客との接点を創出し、テキストや動画、図表など多様な形式で情報を提供できる点は大きな強みである。また、アクセス解析により訪問者の行動を把握し、購買検討段階に応じた適切な情報提供もできる。

 しかし、「Webサイトを作れば自然と問い合わせが増える」という期待は、現実的とはいえない。なぜなら、以下のような本質的な課題が存在するからである。

(1)競合との差別化の困難さ

 同業他社も同様にWebサイトを持ち、似た情報を発信している。そのため、単なる情報掲載だけでは埋没してしまう。

(2)検索上位表示とアクセス獲得の壁

 Webサイトを開設しても、自社のターゲット層が自動的に訪問するようになるわけではない。検索エンジンでの情報収集が一般化している現在、上位表示されなければ実質的に「存在しない」も同然である。そのため、継続的なSEO対策や戦略的な集客施策が不可欠となる。

(3)直接的なコミュニケーションの限界

 対面での営業と異なり、その場での質疑応答や提案ができない。これを補完する工夫が求められる。これらの課題に対処するためには、以下のような本格的な取り組みが必要となる。

  1. ターゲットの検索行動を分析した戦略的なSEO対策
  2. 競合との明確な差別化を図るコンテンツ戦略
  3. 訪問者を適切に誘導する動線設計
  4. 継続的なコンテンツの更新と改善
  5. アクセス解析に基づく改善施策の実施

 つまり、Webサイトは確かに有効なマーケティングツールではあるが、その効果を最大化するには「作って終わり」ではなく、継続的な投資と戦略的な運用が不可欠なのである。表面的な取り組みでは競争の激しいWebマーケティングで成果を上げることは難しく、本気で取り組む覚悟がなければ、期待する効果は得られない。

 Webサイトを真に効果的な営業ツールとして機能させるためには、明確な戦略とそれを実現するための持続的な努力が求められるのである。

Webサイトでよくある失敗

顧客を理解せずに、自社目線で情報を出している

 Webサイトの本質的な役割は、顧客の課題解決に資する情報提供にある。しかし、多くの企業サイトでは「自社の強み」や「製品スペック」といった自社視点の情報発信に終始し、顧客が真に求める情報が提供されていない。

 これは営業活動において、相手の業種や立場を考慮せずに画一的な提案資料を使用するようなものである。例えば、同じ製品でも、設計者は技術仕様に関心を持ち、購買担当者はコストパフォーマンスや供給の安定性を重視する。優れた営業担当者が顧客の立場や課題に応じて提案内容を最適化するように、Webサイトでも訪問者の属性や関心に合わせたコンテンツ設計が不可欠である。

デザイン性を優先し、戦略を立てていない

 洗練されたデザインは企業ブランドの価値を高めるが、それだけでは不十分である。デザインへの過度な注力が、かえって重要情報へのアクセスを阻害したり、問い合わせ動線を不明確にしたりすることもある。

 これは営業における「見た目の美しい提案資料が、必ずしも受注につながるわけではない」という事実と同様である。効果的なWeb戦略とは、「誰に」「何を」「いつ」「どのように」届けるかを明確に定義し、具体的な成果につなげることである。デザインと情報設計のバランスを取りながら、訪問者を適切なアクションへと導く仕組みづくりが求められる。

問い合わせが来ない理由を振り返らない

 Webサイトからの問い合わせが低調な場合、その原因を特定し、改善することが重要である。具体的には、アクセス解析を通じて「どのページがよく見られているか」「どのページで離脱が多いか」「問い合わせフォームまでたどり着いているか」などを検証する必要がある。

 これは、営業活動における「振り返り」の重要性と同じである。優秀な営業担当者は、商談後に相手の反応や説明内容の有効性を分析し、次回の提案に生かす。同様に、Webサイトも訪問者の行動データを分析し、継続的に改善することで、より効果的な営業ツールへと進化させることができる。定期的なアクセス解析とサイト改善によって、問い合わせの増加につなげることができる。営業活動と同じように、PDCAを回しながら改善を続けることが、Webサイトを成功へ導く鍵となるのである。

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