日立の水・環境BUはユーティリティーにプロセスをつなげグリーンを掛け算する日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌(6)(1/3 ページ)

日立の製造業としての側面を色濃く残すコネクティブインダストリーズ(CI)セクターに迫る本連載。第6回は、上下水道の高度水処理システムや半導体工場のクリーンルームといったユーティリティーソリューションを手掛ける水・環境BUをクローズアップする。

» 2025年02月17日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 日立製作所(以下、日立)のコネクティブインダストリーズ(CI)セクターは、公共インフラである上下水道の監視制御を含めた高度水処理システムや半導体/電子デバイス工場のクリーンルームといった、いわゆるユーティリティー(設備)ソリューションも手掛けている。このユーティリティーソリューションを担っているのが水・環境ビジネスユニット(BU)である。

連載『日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌』

 日立の事業を構成する3つのセクターのうち、同社の100年以上の歴史の中で培ってきたモノづくりの力を中核にIT(情報技術)×OT(制御技術)×プロダクトの施策を推進しているのがコネクティブインダストリーズ(CI)セクターである。本連載『日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌』では、日立の製造業としての側面を色濃く残すとともに、デジタルやグリーンなどとの連携によって成長を目指す多彩な事業を抱えるCIセクターの強みについて、それぞれの事業体の特徴や生み出す新たな価値を中心に紹介する。

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GXを象徴する「環境」という言葉が含まれる組織

 日立の決算発表における水・環境BUのセグメントは「水・環境」に対応しており、2024年度連結業績見通しにおける同セグメントの売上高見込みは2000億円となっている。

 水・環境BUは、「きれいな水とクリーンな環境を届ける『ユーティリティーソリューション事業』で社会に貢献」を目標に掲げている。きれいな水は公共ユーティリティーである上下水道への貢献、クリーンな環境は産業ユーティリティーである工場/プラントへの貢献を指す言葉だ。

水・環境BUの事業概要 水・環境BUの事業概要[クリックで拡大] 出所:日立

 日立は2016年4月、従来の製品別のカンパニー制から、サービス主体の事業群とプロダクト主体の事業群で構成される新しい事業体制に移行した。このときに誕生した水BUが、現在の水・環境BUにおける「きれいな水」の源流となっている。もう一方の「クリーンな環境」の主体となっているのが、2019年4月に水BUから水・環境BUに移行する際に、産業・流通BUから加わった日立プラントサービスである。

 日立プラントサービスの沿革は、工場のプラント構築を手掛ける日立プラント建設と、その子会社である日立プラント建設サービスとかかわりがある。まず、日立プラント建設は2006年4月、日立機電工業や日立インダストリイズなどと統合して日立プラントテクノロジーとなったものの、2013年4月に日立のインフラシステム事業部門との統合による社会イノベーション事業の強化を目的に日立本体に合併吸収されている。

 一方、日立プラント建設サービスは、2012年4月に現在の社名である日立プラントサービスに社名を変更。2013年4月には、日立プラントテクノロジーの日立本体への合併吸収により日立の子会社となり、併せて日立プラントテクノロジーの産業水処理事業が移管された。その後日立本体からは、2014年4月に国内空調事業、2018年4月にプロセス事業、2020年4月に国内水処理機械事業を移管。また同年7月には、日立プラントメカニクスから温湿度環境試験装置事業および医薬プラントのアフターサービス事業が移管された。

 日立が全社で推進する社会イノベーション事業が2本柱とするGX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)だが、水・環境BUはGXを象徴する「環境」という言葉が含まれる組織だ。実際に、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー関連のプロジェクトへのかかわりも深い。例えば、2022年9月に発表した「民生・産業向け水素利用サプライチェーン構築およびデジタル技術で電力需給調整を行う実証事業」では、福島県浪江町において、地域でグリーン水素利用を促進し、地域全体の活性化につなげる取り組みを進めている。

福島県浪江町における地域向け水素利活用実証の概要 福島県浪江町における地域向け水素利活用実証の概要[クリックで拡大] 出所:日立


 次ページからは、日立 執行役常務で水・環境BUのCEOを務める中津英司氏のインタビューをお送りする(取材は2024年12月10日に行った)。なお、中津氏は2025年4月からの新体制において、新たに発足するインダストリアルプロダクツ&サービスBUのCEOに就任する予定だ。

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