ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は家計の所得格差を表す「ジニ係数」の国際比較について紹介します。
前回は私たちの家計の所得格差を表す「ジニ係数」について解説しました。
おさらいとなりますが、ある集団の所得水準について、その均等度を0〜1の数値で表し、1に近づくほど格差が大きいという指標がジニ係数になります。詳しくは、前回の記事をぜひご覧ください。
今回はOECDが公開しているジニ係数から、これらを比較し、そこから見える日本の現状について紹介します。
⇒連載「小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ」のバックナンバーはこちら
OECDでは加盟国各国のジニ係数を公開しています。OECDによるジニ係数は、市場所得(Market income)と可処分所得(Disposable income)の2種類について集計されています。まずは、前提となるそれぞれの項目の定義について紹介します。
可処分所得と市場所得は以下のように定義できます。
市場所得は再分配前の家計としての総所得です。給料としての雇用者所得や、個人事業主としての事業所得、資産などの運用による財産所得を全て足し合わせた所得ということになります。
可処分所得は市場所得に対して、税や社会保険料の支払い、社会保障給付の受取などの再分配を経て、手元に残った自由に使えるお金となります。所得の均等度を示すジニ係数はこれらの可処分所得や市場所得について計算、公表されています。分かりやすく言い換えると、再分配前の所得格差と、再分配後の所得格差ということになります。
まずは、OECDで公開されているジニ係数について、日本の推移データを見てみましょう。図1が日本の現役世代(18〜65歳)のジニ係数の推移です。
赤が再分配前の市場所得、青が可処分所得のジニ係数を示しています。どちらも1985年から見るとやや上昇し、停滞傾向となっています。
市場所得の格差に対して可処分所得の格差が低い数値になっているのは、それだけ再分配によって所得格差が縮小していることを示しています。この再分配による格差の是正の度合い(再分配効果)を示すのが、緑の棒グラフです。
再分配効果も1985年から見るとやや上昇しています。これは以前と比較して、格差是正の効果が強まっていることを示しています
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.