セイコーエプソンは、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」の価値創造戦略の進捗状況について発表した。2025年は長期ビジョンの最終年度でありつつ、エプソンブランド50周年の節目の年となる。
セイコーエプソンは2025年7月1日、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」の価値創造戦略の進捗状況について発表した。
「Epson 25 Renewed」は「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」ため、「環境」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「共創」に重点を置き、5カ年の長期ビジョンとして取り組んできたものだ。2025年度はその最終年度となる。また、2025年はエプソンブランド制定から50周年を迎える。
セイコーエプソン 代表取締役社長 CEOの吉田潤吉氏は「2025年はエプソンブランド50周年であり長期ビジョンの最終年度でもある。企業価値の着実な成長と今後の飛躍を見据える節目の年となる」と語る。
エプソングループはパーパスとして「『省・小・精』から生み出す価値で人と地球を豊かに彩る」を掲げているが、それを基に価値創造までのストーリーを独自に構築しており、これらに合わせた形で価値創造戦略を組み立てている。
価値創造戦略として、オフィス/ホームプリンティング領域でエプソングループが提供価値として位置付けているのが「分散化に対応した印刷の進化により、環境負荷低減と生産性向上を実現」することだ。家庭用では、大容量インクタンク搭載プリンタを2010年から投入し2024年度には累計1億台販売を達成した。また、プリンタをIoT(モノのインターネット)機器として活用できる機能などを充実させている。一方オフィス向けでは、レーザー方式からインクジェット方式へのシフトを推進し、省エネと環境負荷低減に取り組んでいる。
商業/産業プリンティング領域では、「印刷のデジタル化を主導し環境負荷低減と生産性向上を実現」することを目指す。さまざまな素材にプリントが可能な、UV、溶剤系インク、昇華転写プリンタなどの展開を強化する。また、カラーマネジメントや業務の効率化を実現するクラウドソリューションを組み合わせて提案する。新開発の1200dpiのプリントヘッドを搭載した次世代ラベル印刷機も好評を得ているという。また、繊維/ファッション業界に向けても、デジタル衣装制作やデジタル捺染などの市場開拓に取り組む。「デジタル捺染はまだ市場としては大きくないが、複雑なデザインへの対応など素材対応力や発色性の高さを生かして拡大している」(吉田氏)
さらに、2024年9月に完全子会社化を発表した米国のFieryとの連携を進め、Fieryが持つ印刷業界向けデジタルフロントエンドサーバやワークフローソリューションとの組み合わせでデジタル印刷市場の成長を加速させる方針だ。
さらに、インクジェット技術の拡大に力を入れる。外販用プリントヘッドは顧客ニーズに合わせさまざまなインクの吐出を可能とするラインアップを拡充する。また、インクジェット技術を応用した産業製造装置開発などにも積極的に取り組む。スタートアップのGosan Techへ出資した他、プリンテッドエレクトロニクス分野にインクジェット技術を取り入れるためSUSSと協業する。
これらの拡大を目指し、プリントヘッドの生産能力も拡大する。継続して投資を続けているが新たに東北エプソンに約51億円を投資しプリントヘッド製造の新棟を建設している。2025年9月に完成予定だとしている。
吉田氏は「2026年度以降もインクジェット技術のさらなる応用展開は進めていく。先進国や新興国での拡大、商業や産業分野への応用強化を進める。新興国においても環境負荷低減や厳しい電力事情への対応力が評価され、普及が広がると見ている」と語っている。
ロボットなどマニュファクチャリング領域では「生産性や柔軟性が高い生産システムによるモノづくりの革新」を目指し、さまざまな技術開発や協業などを進めている。その1つとして、新たに人協働ロボットを開発した。ライフサイエンスや製薬業界、ラボオートメーション領域などの用途を想定し、2025年内に日本や欧州で発売する。さらに、小売りやサービス業におけるロボティクス活用を進めている米国スタートアップ企業「Blank Beauty」に出資し、新たなロボット活用領域の開拓に取り組んでいる。
さらに、環境技術開発としてエプソンアトミックスで進めてきた、廃棄される金属を原料として資源化する工場を2025年6月に完成させ、稼働した。さらに、香港繊維アパレル研究開発センターとの協業で、廃棄されるコットンから新プロセスで光沢のある再生繊維の開発に成功した。衣類のリサイクル促進につながるとしている。
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