パナソニックグループは「Panasonic Group IR Day 2025」を開催し、同グループが注力する「ソリューション領域」で成果を残している3つの事業の戦略について説明した。前編で基本的な考え方と、AIデータセンター向けソリューションで実績を伸ばすパナソニックエナジーの取り組みについて取り上げる。
パナソニックグループは2025年12月2日、「Panasonic Group IR Day 2025」を開催し、同グループが注力する「ソリューション領域」で成果を残している3つの事業の戦略について説明した。
パナソニックグループは、2025年2月に成長の軸として、製品やサービスを組み合わせて新たな価値を創出する「ソリューション領域」を明確に位置付けた。ソリューション領域に当てはまる事業としては、データセンター向け蓄電池、電設資材事業、SCMソフトウェア、アビオニクス、ERV(エネルギー回収型換気扇)/ダクト型換気扇、コールドチェーン、頑丈PC、実装機/溶接機、現場ソリューションなどを位置付けている。
パナソニック ホールディングス グループCEOの楠見雄規氏は「顧客の収益に継続的に寄与することでリカーリング型のビジネスが実現できる。これらを実現するためには、顧客とつながり続け共に発展する関係性を作り上げることが必要だ。また、グローバルで戦える強い事業群やオペレーション力が求められる。持続的に顧客の課題解決に貢献し続けることは難しいが、いくつかの事業で成功の形が生まれつつある」とソリューション領域への注力について説明する。
ソリューション型ビジネスの成功の形として、グローバルでの成長と、顧客との固い関係性を実現している3つの事業が「データセンター向け蓄電システム」と「建物ライフタイムバリュー向上ソリューション」「SCMソフトウェア」である。
本稿では、前編でAIデータセンター向けソリューションで実績を伸ばすパナソニックエナジーの取り組みについて取り上げる。後編では、建物ライフタイムバリュー向上ソリューションを展開するパナソニック エレクトリックワークス社、SCMソフトウェアを展開するパナソニック コネクトの戦略について説明する。
電池や電源関連製品などを扱うパナソニック エナジーは、主力の車載電池がEV(電気自動車)の世界的な需要低迷の影響を受け、成長が鈍化しているが、その代わりに大躍進を遂げているのが、AIデータセンター向けの蓄電システムだ。生成AIの利用が拡大する中、データセンターの消費電力が大幅に増え、省エネ化につながる高度な電源ソリューションへのニーズが高まっている。
パナソニック エナジー 社長執行役員CEO 只信一生氏は「AIデータセンターにおける電源への要望としては、電圧変動の平滑化や電力ピーク抑制、電源バックアップによる365日安定稼働がある。これらを満たすような高度な電源マネジメントが求められている」と背景について語る。
その中でパナソニック エナジーでは、安全な電池を核としつつデータセンター側のニーズに合わせた電源システムをソリューションとして用意することで、価値の最大化を目指している。「目指す姿は『データセンター向け電源ソリューションプロバイダー』だ。高度化する顧客課題への先行的なソリューション提案を実現するとともに、需要急増や変動などに柔軟に応える供給力を提供価値としていく」と只信氏は説明する。
実際にAIデータセンター向け蓄電システムは2025年度(2026年3月期)も大きく成長している。2025年度期初時点で前年度比1.5倍の成長を想定していたが、上期は想定以上に成長し1.7倍への上方修正したという。
パナソニック エナジーの蓄電システムが評価を受ける理由について、只信氏は3つの点を挙げる。「1つ目は、長年の開発、納入実績により、業界リーダーとの強い関係性があるという点だ。2つ目が、業界ニーズなどを先取りし先行的な仕様提案や主要機能の最適統合など、課題を解決する設計提案力がある点となる。そして、3つ目が、セルからモジュールまで一貫開発、一貫生産を行うことによる提案商品の具現化力だ。これらの一連の取り組みを行えるところがないため、高いシェアを獲得できている」と只信氏は説明する。
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