日立の製造業としての側面を色濃く残すコネテクティブインダストリーズ(CI)セクターに迫る本連載。第2回は、日立の祖業であるモーターの事業を継承する日立インダストリアルプロダクツをクローズアップする。
日立製作所(以下、日立)のコネテクティブインダストリーズ(CI)セクターにおいて、モーターやインバーターなどのドライブシステム、ポンプや圧縮機などの機械システムといった大型産業機器を手掛けているのが日立インダストリアルプロダクツである。
同社は日立の祖業であるモーターの事業を継承する一方で、設立は2019年ということもあり“歴史ある若い会社”ともいえる。本連載第1回の、CIセクタートップで日立 代表執行役 執行役副社長を務める阿部淳氏のインタビューに続き、第2回は日立インダストリアルプロダクツをクローズアップする。
日立の事業を構成する3つのセクターのうち、同社の100年以上の歴史の中で培ってきたモノづくりの力を中核にIT(情報技術)×OT(制御技術)×プロダクトの施策を推進しているのがコネテクティブインダストリーズ(CI)セクターである。本連載『日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌』では、日立の製造業としての側面を色濃く残すとともに、デジタルやグリーンなどとの連携によって成長を目指す多彩な事業を抱えるCIセクターの強みについて、それぞれの事業体の特徴や生み出す新たな価値を中心に紹介する。
2024年度連結業績見通しにおける日立CIセクターの売上高見込みは3兆1500億円。セグメント別では、ビルシステム、生活・エコシステム、計測分析システム、インダストリアルデジタル、水・環境、インダストリアルプロダクツの6つに分かれている。産業機器製品関連事業のセグメントになっているインダストリアルプロダクツは売上高見込み5110億円となっており、その中で大型産業機器を担当する子会社が日立インダストリアルプロダクツとなる。
取り扱い製品は、モーターやインバーターから成るドライブシステムを中核とする電機システムや、圧縮機、ポンプ、ファン/ブロワーなどの機械システムなどの大型産業機器だ。電機システムは、産業機械や工場の連続生産ラインのプロセス制御、鉄道車両、機械システムは社会インフラなどに用いられており、顧客のニーズに合わせた多品種少量生産が求められる非量産系のモノづくりを行っている。
日立インダストリアルプロダクツの沿革の冒頭に来るのは、日立の創業に当たる1910年の5馬力電動機の完成である。これは、電動機=モーターの事業を継承しているからに他ならない。
実質的な日立インダストリアルプロダクツの起点となったのが、2015年のインダストリアルプロダクツ社の発足である。当時の電力システム社のモーター、受変電機器、インフラシステム社のパワーエレクトロニクス機器、圧縮機、ポンプ、試験機、ロジスティクス機器などの大型産業機器事業を統合した。さらに2016年には、電力・インフラシステム営業統括本部から産業機器主体の営業部門を統合し、製販一体体制のインダストリアルプロダクツBU(ビジネスユニット)に再編成された。そして2019年4月、同BUを吸収分割によって承継する形で日立インダストリアルプロダクツが設立されたのである。
主要な製造拠点は、モーターを手掛ける日立事業所(茨城県日立市)、パワーエレクトロニクス製品を扱う大みか事業所(茨城県日立市)、大型ポンプや圧縮機、ファン/ブロワーを担う土浦事業所(茨城県土浦市)の3拠点である。
大型産業機器という取り回しの難しいプロダクトが事業の中核ではあるものの、日立インダストリアルプロダクツとして新たな取り組みにも挑戦している。その代表となるのが、最大20台のEV(電気自動車)の同時充電が可能なマルチポートEVチャージャと通勤用EVを組み合わせたCO2削減モデル「Workplace E-Powering(WEP)」だろう。
現在、土浦事業所で実証実験を行っており、同事業所のマイカー通勤者324人全員がWEPを利用した場合、年間のCO2削減量は370トンに達し、マイカー通勤の燃料代金として支払われてきた通勤手当も年間3000万円削減できると試算されている。さらに、日立グループの国内拠点全体で導入した場合には、年間CO2削減量は3万トンとなり、通勤手当を年間23億3500万円削減できる可能性があるという。
次ページからは、日立インダストリアルプロダクツ 取締役社長を務める小林圭三氏のインタビューをお送りする。
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