アベノミクス第3の矢を実現する10のイノベーション【後編】:安倍政権の命運を左右する?(5/5 ページ)
近年、軽量かつ強度の高い炭素繊維強化樹脂が、自動車や飛行機の軽量化によるエネルギー効率の向上に貢献する次世代の構造部材として注目されている。SIPの「革新的構造材料」プログラムでは、こうした航空機用樹脂の開発に加え、より耐久性の高いセラミックコーティングや新たな合金など、次世代の構造材料の開発に取り組む。PDは東京大学 名誉教授であり物質・材料研究機構の顧問の岸輝雄氏が務め、2014年度の分配予算は36億800万円である。
「革新的構造材料」プログラムの概要(左)と同プログラムのPDを務める岸輝雄氏(右)(クリックで拡大)出典:内閣府
岸氏は同プログラムについて、「日本の先端素材に関する技術は、国際的にも高いレベルにあるが、国際競争力を高めていくことがより重要になる。このプログラムでは、航空機のエンジンなど過酷な環境でも利用できる次世代の構造部材の開発に取り組み、航空機や発電産業などの躍進に貢献することで、日本の工業素材産業の発展を目指す」と説明した。
こうした次世代の構造材料の研究開発と同時に研究目標として掲げられているのが、材料科学と情報科学の融合を目指した「マテリアルズインテグレーション」という概念の確立である。材料工学に計算機科学や情報工学の手法を融合し、材料が実際に使われる際のパフォーマンス特性を把握できるツールを開発することで、材料製造・設計の短期化を実現するという。
日本国内における研究開発体制を整備し、さらに国際連携も進めていくという(クリックで拡大)出典:内閣府
同プログラムでは日本国内に4つの研究開発拠点を設置し、全国各地で研究開発が進められる体制を整えていくという。また、2015年2月には東京で次世代材料に関する国際シンポジウムを開催するなど、研究開発の国際連携も推進していくとしている。
- アベノミクス第3の矢を実現する10のイノベーション【前編】
安倍政権が推し進める経済再生政策の「第3の矢」を実現する上で重要な役割を担っているのが、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」だ。年間予算がそれぞれ数十億円に達するSIPの10のプログラムについて、「SIPシンポジウム」の講演内容に沿って前後編に分けて紹介する。
- 日本の防衛を支える最新テクノロジー
IoT市場拡大の基礎となっているさまざまなセンサー技術の進歩や、それに伴って登場したウェアラブル端末などが新たな市場を切り開きつつある。こうした新しい技術やデバイスは、日本の防衛装備にも活用されており、防衛省の平成27年度概算要求にも反映されている。クラウドを活用する次世代戦闘機を筆頭に、ドローン、陸上無人機、パワードスーツなどの導入/開発を計画しているのだ。
- 自動運転技術開発担当PDの渡邉氏が意気込み、「国がやるR&Dの新しい形見せる」
自動運転技術の開発に日本政府も本腰を入れ始めた。政府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)における2014年度の10の対象課題に、自動走行(自動運転)システムが入ったのである。プログラムディレクター(PD)に就任したITS Japan会長の渡邉浩之氏は、「国が関わるR&D(研究開発)の新しい形を見せたい」と意気込む。
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