線虫が尿からがんのにおいを感知! がんの早期発見に医療技術ニュース

九州大学大学院理学研究院の広津崇亮助教らの研究グループは、線虫が尿によって高精度にがんの有無を識別できることを明らかにした。実用化されれば、尿1滴でさまざまな早期がんを約95%の確率で検出できるという。

» 2015年03月27日 08時00分 公開
[MONOist]

 九州大学は2015年3月12日、線虫が尿によって高精度にがんの有無を識別できることを明らかにした。同大大学院理学研究院の広津崇亮助教、伊万里有田共立病院の園田英人外科部長らの研究グループによるもので、実用化されれば、尿1滴でさまざまな早期がんを約95%の確率で検出できるという。

 今回、同研究グループでは、がん患者が持つ特有のにおいと、線虫「C・エレガンス」に注目した。この線虫は、嗅覚受容体を犬と同等程度持つ嗅覚の優れた生物で、においに対する反応も走性行動を指標にして調べることができる。飼育も容易で、従来のがん探知犬では不可能だった、がんのにおいとその受体を同定できるという。

 研究ではまず、がん患者の尿に対する線虫の反応を調査。線虫は、がん患者の尿には誘引行動を、健常者の尿には忌避行動を示すことが分かった。このことから線虫は、尿中におけるがんのにおいを感じていると考えられるという。また、ステージ1の早期がんにも反応しており、早期がんを発見できる可能性も示唆された。

 さらに、この線虫の嗅覚を用いたがん診断テスト(n-nose)の精度を調査するため、がん患者24人、健常者218人の尿を採取し、線虫の反応を調べた。その結果、がん患者をがんと診断できる確率は95.8%、健常者を健常者と診断できる確率は95.0%に達したという。

 他にn-noseの利点としては、必要な尿はわずか1滴で苦痛がないこと、尿の採取に条件がないこと、約1時間半で診断結果が出ること、10数種類のがん全てを検出可能(早期発見が難しい膵臓がんも含む)などがある。コスト面にも優れ、腫瘍マーカーが1検体数千円以上であるのに対し、n-noseは数百円で行える。

 同研究グループでは、既に特定のがんにだけ反応できない線虫株の作製にも成功し、がんの有無だけでなく、がん種まで特定できるという。今後、n-noseが実用化されれば、がん検診受診率の飛躍的向上とそれに伴う早期がん発見率の上昇、がん死亡者数の激減、医療費の大幅な削減が見込まれるとしている。

 なお、同研究成果は、2015年3月11日(米国東部時間)付の米オンライン科学誌『PLOS ONE』に掲載された。

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