がんや認知症を健診で簡単に発見、産官学共同で次世代診断システム開発へ医療技術

新エネルギー・産業総合開発機構(NEDO)は、国立がん研究センター(以下、NCC)や東レなどが、健康診断などで簡単にがんや認知症を検査できる診断システムの開発プロジェクトを発表した。「マイクロRNA」と呼ばれるバイオマーカーを使って、1度の採血で13種類のがんを診断できるシステムの実用化を目指す。

» 2014年08月18日 16時58分 公開
[MONOist]

 新エネルギー・産業総合開発機構(NEDO)は2014年8月18日、国立がん研究センター(以下、NCC)や東レなど9機関が連携して、健康診断などで簡便にがんや認知症を検査することができる診断機器/検査システムの開発に着手すると発表した。このシステムが実用化されると、1回の採血で13種類のがんを診断することができるという。

 NEDOは、2014年度〜2018年度の5年間で、「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」と呼ぶ、産官学連携の開発プロジェクトを立ち上げた。患者への負担をできるだけ軽減するため、より早期に一度の検査でさまざまながんを診断できる技術の開発と実用化に向けたものである。プロジェクトの事業規模は約79億円を予定している。

 この開発プロジェクトでは、NCCに蓄積されている膨大な臨床情報と、バイオバンクの検体、マイクロRNA腫瘍マーカーに関する研究成果をベースとする。なお、マイクロRNAとは、血液や唾液、尿といった体液に含まれる小さなRNAのこと(関連記事:乳がんや大腸がんを1回の採血で発見する診断システム、NEDOが開発に着手)。そして、東レが開発したDNAチップと、東レとNCCが共同開発した、血液中に存在するマイクロRNAバイオマーカーの検索手法を用いる。体液中のマイクロRNAの発現状態に関するデータベースを構築し、そのデータを活用して網羅的に解析するというもの。

「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」プロジェクトのイメージ図 (クリックで拡大) 出典:NEDO

 今回の開発プロジェクトでは、胃がんや食道がん、肺がん、肝臓がん、大腸がんといった13種類の主要ながんや、アルツハイマー病などの認知症について、NCCや国立長寿医療研究センター(NCGG)のバイオバンクに保存されている数十万検体の血清を用いて、疾患マーカーを検索できるのが特長だ。「これまでも、世界中で疾患マーカーの検索は行われてきたが、限定された検体群を用いて検索していたため、実用化に至った案件が少ない」という。さらに、感度や精度の高いマイクロRNA疾患マーカー検出ツールも同時に開発する予定である。

 開発プロジェクトでは、大きく4つのテーマに取り組む。それは、「患者体液中マイクロRNAの網羅的解析」「疾患横断的に解析可能なマイクロRNA発現データベースの構築」「マイクロRNA診断マーカーとマイクロRNA検査/診断技術の開発」「臨床現場での使用に向けた検査システムの開発」である。

 開発プロジェクトは、NCC研究所の分子細胞治療研究分野で分野長を務める落合孝広氏が研究開発責任者となり、NCCの研究部門と臨床部門、東レをはじめとする9機関と連携を図りながら、NCCと8大学の共同実施として取り組むことになる。

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