産業技術総合研究所とダイキン工業は、空気清浄機や空気調和設備の配置が室内の粒子濃度に与える影響を評価し、適切な配置によって室内の粒子量を最大88%削減できることを確認した。
産業技術総合研究所は2025年5月19日、ダイキン工業と共同で、空気清浄機や空気調和設備(空調)の配置が室内の粒子濃度に与える影響を評価し、適切な配置により室内の粒子量を最大88%削減できることを確認したと発表した。
ウイルス感染防止と室内汚染物質の暴露低減に向け、換気、フィルター付き空調や空気清浄機などによるウイルス除去が進められている。今回の研究では、32.8m3の大規模クリーンブース内でサーマルマネキンを用いた模擬飛沫核の飛散実験と28地点での多点計測を実施し、異なる設置位置での空気清浄機の稼働やフィルター付き空調の影響など、21ケースで詳細に評価した。
空気清浄機無し、空調無しのケースを基本として各対策効果を評価したところ、空気清浄機をターボモードで稼働して空調を稼働しなかったケースでは、室内全体の平均粒子濃度に大きな変化はなかった。一方で、正面の人が暴露する粒子濃度は、空気清浄機の設置位置により、濃度の変化無しから94%削減と大きく異なった。このことから、空気清浄機の設置位置が、粒子量低減効果に大きな影響を与えることが明らかとなった。
ターボモードの空気清浄機とフィルター付き空調を稼働させたケースでは、模擬飛沫吐出中30分間における室内全体の粒子量は88%、正面の人が暴露する粒子量は94%削減した。
今回の結果から、空気清浄機は特定の場所の粒子量を低減できるものの、室内全体の粒子量を減らすことはないことが分かった。室内全体の粒子量を低減するには、空気清浄機とフィルター付き空調機の組み合わせが有効であることが示された。
また、スーパーコンピュータを使用しない簡易シミュレーションと実測結果を比較した結果、実験で粒子濃度が高い地点は数値流体力学(CFD)シミュレーションも高い結果を示した。このことから、CFDシミュレーションの有効性が示唆される。
これまで、空調や空気清浄機などによるウイルス除去効果の検証は、クリーンブースなどでの室内粒子量を低減した状態での飛沫拡散試験か、スーパーコンピュータなどの大規模計算リソースによるCFDシミュレーションを用いる必要があった。そのため、実際の室内における空気清浄機や空調の最適配置に関して、安価で迅速な方法が求められていた。
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