新生VAIOのスマートフォン参入で注目を集めた今回のVAIO Phone発表だが、実際には製造元は日本通信であり生産は海外に委託する体制を取る。VAIOが請け負ったのはデザインと開発におけるエンジニアリング領域の支援だけだ。また、そのデザイン面においても「既に用意されたシャーシにVAIOとしてのデザインエッセンスを持ちこんだ。本体表裏のガラス素材を生かした光沢面と側面のマット仕上げでデザインと持ちやすさを両立させた」(VAIO 執行役員 花里隆志氏)とするなど、関わった部分は限定的だといえる。
また、OSにAndroid 5.0を採用し、5型で720×1280のタッチスクリーン、1300万画素CMOSカメラ、1.2GHzのクアッドコアCPU、2GBのRAM、2500mAhバッテリーを搭載するなど、スペックとしてもそれほど特徴のある製品とはいい難いものがある。
また今後についても「通信部分における開発リソースをすぐに用意することは難しく、ゼロベースから新たにスマートフォンを開発することは現在は考えていない。今回の協業などを踏まえて、今後はIoTなどを見据えたハードウェアと通信を結びつけたサービスなどで新たな可能性を探っていく」と花里氏は述べている。
性能が平凡であることに対し三田氏は「ハードウェアだけで考えた場合、既にスマートフォンはコモディティ化が進んでおり、付加価値を示すことは既に難しくなっている」と述べる。
しかし「コンピューティングの流れそのものが、特定の顧客の問題解決に役立つソリューションの方向に移ろうとしている。特にIoTが本格化すればその流れは加速するだろう。その時にハードウェアだけを見ていても何も評価はできない。ハードウェアと通信、アプリケーションを組み合わせて、顧客の問題を解決し、付加価値を生み出す方向になるだろう。そのためにより特定の顧客に結び付いたパートナーシップを組んでいく」と三田氏は考えを述べている(関連記事:製造業は「価値」を提供するが、それが「モノ」である必要はない)。
その意味でVAIO Phoneは、外部からアプリケーションを自動セットアップできる「オートセットアップ機能」など、通信サービスとアプリケーションを組み合わせて機能強化を行える機能を用意している。「法人用途などで業務アプリを利用したい時に一括で限られた1000台に対してアプリをセットアップするなど、個別のニーズに合わせた設定が可能。当初はBtoCが多いと思うが、いずれはBtoB用途が増えてくると考えている」と福田氏は語っている。
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