日本の製造現場においてAI導入が踊り場を迎える中、汎用AIだけでは突破できない壁が見えてきている。意思決定の遅さやデータ未整備といった日本固有の課題に対し、今求められる「現場をデザインする力」とは何か。Nagarro マネージング・ディレクターの和久田典隆氏に聞いた。
Nagarroは1996年にシリコンバレーで設立された、世界39カ国に展開するデジタルエンジニアリングベンダーだ。2017年には日本法人を立ち上げ、2025年度からは国内における製造DX(デジタルトランスフォーメーション)へのアプローチを一層強化している。
2026年2月24日には、米SRI Internationalのスピンオフ企業で高精度ナビゲーションを得意とするGuide Roboticsとの戦略的パートナーシップを発表。高精度な屋内測位技術とAIを融合させることで、汎用AIでは解決困難な日本固有の課題に特化した「Vertical AI(業界特化型AI)」の社会実装を加速させている。
Nagarroが目指す「止まらない現場」とはどういうものか。また、AI時代の到来によって製造現場の組織や開発の在り方はどうあるべきか。日本法人を率いる、Nagarro マネージング・ディレクターの和久田典隆氏に聞いた。
日本の労働市場は、深刻な人材不足に直面している。これに対し和久田氏は、「少人数でも高度な業務遂行を可能にするAI(人工知能)の活用は、日本にとって極めて大きなメリットをもたらす」と強調する。
組織の在り方についても、従来の人員を増やさなければ成長できないピラミッド型から、AIが下流工程を代替するダイヤモンド型組織への移行が始まっていると同氏は説く。このモデルでは、人間は「アーキテクト」として現場の課題を定義し、AI実装の要件定義や品質管理といった中核業務に注力することになる。「現場の生の課題をデザインする人間と、効率化されたAI開発を柔軟につなぐ仕組み。これが現代の製造現場において、AIを単なるツールではなく実効性のある解決策へと昇華させるためのカギとなる」(和久田氏)。
しかし、国内ではAIを使いこなせる人材そのものが不足していることに加え、「意思決定の遅さ」や「過剰なまでの品質要求」が足かせとなり、グローバルのデジタル化の速度から乖離しているという。また、現場の複雑な工程や職人の暗黙知がデータ化されていない状況も、汎用的なAIを導入するだけでは解決できない日本固有の難しさとして立ちはだかっている。
こうした課題に対し、NagarroはVertical AI(業界特化型AI)を戦略の柱に据えて日本市場での取り組みを強化している。Vertical AIとは、汎用的なAIとは異なり、製造業の特定の業務プロセスや業界特有の文脈を深く理解するように設計されたAIを指す。同社はこの戦略を具現化する2つの具体的なソリューションを提示した。
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