AIだけでは日本製造業は救えない、必要なのは「現場をデザインする力」製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)

» 2026年03月02日 06時15分 公開
[安藤照乃MONOist]
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既存システムとの融合で物流のボトルネックを暴く

 1つ目は、今回協業を発表したGuide Roboticsとの提携によって実現する、工場内での高精度な屋内測位技術と、それに基づいたオペレーション改善の提供である。Guide RoboticsはGPSが利用できない屋内環境において、カメラ/センサーから収集したデータをVisual SLAM技術で解析することで、フォークリフトやロボットのリアルタイム位置情報の可視化に強みを持つ。

Guide Roboticsの強み Guide Roboticsの強み[クリックで拡大] 出所:Nagarro
Nagarroの基幹システムとの連携により現場改善を実現 Nagarroの基幹システムとの連携により現場改善を実現[クリックで拡大] 出所:Nagarro

 この高精度位置データと、Nagarroが持つWMS(倉庫管理システム)やERP、クラウドといった既存の基幹システムと統合。さらに、製造業に特化したコンサルタントが直接現場に入り込むことで、収集されたデータからボトルネックやアイドリング時間を分析し、走行ルートの最適化など現場のオペレーションに直結するインサイトを提供する。製造業が持つ工場だけでなく、物流倉庫など広範な現場への展開を狙う。

故障から数秒で修理を提案、止まらない現場の実現へ

 2つ目は、AIを活用した設備保全IoT(モノのインターネット)プロダクトである。これは計画や作業指示、部品管理などを一元化したノーコードのシステムだ。具体的には、設備故障が発生した際に、AIがマニュアルや過去の知見を解析し、最適な修理方法や必要部品、使用する工具の種類を特定し作業指示までを提案する。これまで、熟練工の勘や紙の資料に依存していた保守業務をデジタルすることで、経験の浅い作業員でも迅速かつ的確な修理が可能となる。

設備保全IoTプロダクト 設備保全IoTプロダクト[クリックで拡大] 出所:Nagarro

 同プロダクトは、大手自動車メーカーにおける3000台以上の溶接ロボットのメンテナンスに導入されている。導入企業では、メンテナンスコストが20%削減、ダウンタイムが15%削減されたほか、ロボット稼働率の最適化や早期の故障検知の成果が出た。

設備保全IoTの導入事例 設備保全IoTの導入事例[クリックで拡大] 出所:Nagarro

 和久田氏は、「メンテナンスを早くすることは、単なる工数削減ではなく、“止まらない現場”を実現するための攻めの戦略だ。設備が停止すれば多大な損失を生むが、AIによって知見をデジタル化することで、修復までの時間を極限まで削ぎ落とすことができる」と語る。

日本の製造業をグローバルスピードへ引き上げる

 しかし、優れた技術であっても、外部から技術を提示するだけでは現場での実運用には至らない。そこでNagarroでは、まずはヒアリングを通じて業務プロセスを把握し、それらを解決するプロトタイプを即座に提示する手法を採っている。和久田氏は、「言葉だけの説明では理解が難しいが、実物を見ながら『ここはこうだ、ああだ』と議論できるようになれば、合意形成は非常にスムーズに進む」と、現場との対話における可視化の重要性を説く。

 また、直近ではAIを駆使した高速プロトタイピングによる新たな営業体制への転換も進めている。従来の提案スタイルでは、課題を持ち帰り、次の提案をするまでに数週間要することも珍しくない。これに対し同社は、AIを活用して事前に想定される業務ワークフローを作成し、初回の打ち合わせから具体的なプロトタイプを提示するスタイルを実践している。このアプローチにより、「従来3カ月かかっていた商談期間を1カ月へ、10回必要だった打ち合わせを4回程度に短縮する」(和久田氏)という目標を掲げている。

AIを活用した高速プロトタイピングによる営業体制 AIを活用した高速プロトタイピングによる営業体制[クリックで拡大] 出所:Nagarro

 一方で、AIのみに頼ることで業界理解が薄くなるのではないかという懸念に対しては、製造業に精通し、現場経験を積んだコンサルタントがAI実装の設計を担うことで対応している。

 和久田氏は、Nagarroの役割を「単に最先端の技術を売ることではない。現場に潜む本質的な課題を正しくデザインできる人間と、進化するAI開発をつなぐ架け橋になることだ」と語る。

「日本の製造業には、世界に誇るべき高い品質と、緻密な現場力があります。一方で、デジタルの世界ではその慎重さがスピードを鈍らせる要因にもなっている。現場を深く理解した『Vertical AI』のアプローチによって、高い要求水準と圧倒的なスピードを両立させたい。日本の現場が再び世界をリードできるよう、われわれはパートナーとして伴走し続ける」(和久田氏)

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