ソニーから独立したVAIOは、独立後初めてゼロから開発した製品群を発表した。従業員規模がグローバルで全社員合わせて14万人規模の企業体から、240人規模の会社になる中で、モノづくりの手法も大きく変化した。「全社員がみんなで作り上げた製品だ」(VAIO 代表取締役の関取高行氏)とする取り組みの中で、どういうモノづくりのアプローチで新製品を実現したのかについて紹介する。
VAIOは2014年7月1日に、ソニーのPC事業部を継承して独立した(関連記事:最後発のPCベンチャー「VAIO」が選んだ“切り込み隊長”として生きる道)。独立後しばらくは、ソニー時代に開発した製品群の展開を進めてきたが2015年2月16日に、新生VAIOとして初めてゼロから開発した製品「VAIO Z」と「VAIO Z Canvas」を発表した。製品の概要についてはITmedia PC USERの「きょうから始まる新生VAIOの物語──「VAIO Z」に込めた“メイド イン 安曇野”の条件」などが詳しく紹介しているが、本稿ではVAIOのモノづくりにおける新たな取り組みについて紹介したい。
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本講演では、新生VAIOが、PCというコモディティの典型のような市場で、どういう方向性を目指し、どういうモノづくりを行っていくのか、などについて聞いている。
新製品発表の会見で、VAIO 代表取締役の関取高行氏は「ソニー時代との違いは本当に社員1人1人全員で作り上げたことだ。大きな組織になればともすれば設計や開発の担当者や製造担当者だけが作るという状況に陥りがちだ。しかしわれわれは規模が小さくなったことで、設計や開発、製造、品質までみんなで考えてみんなで作り上げてきた。『全員でやる』というところが最も変わったところだ」とソニー時代との違いを述べた。
ソニーは従業員規模がグループ全体でグローバルで14万人規模の大企業である。またPC事業部だけに限っても1000人以上の人々が所属する多所帯だった。しかし、新生VAIOとして再出発した従業員規模は240人。小回りがきく点やそれぞれの意思疎通や危機意識を共有できる点は強みとなるが、できることは限られるようになる。また販売台数としてもソニー時代はグローバルで年間560万台(2014年3月期)規模の販売を行っていたのに対し、設立会見では「2016年3月期で年間販売台数は30〜35万台程度」(関取氏)としており、数の論理が働きづらい状況となっている。
リソースが限られるこれらの状況の中では、従来通りのモノづくりを進めていては当然勝ち残ってはいけない。その中でまず明確化したのが、狙うポジションだ。
PCおよびスマートデバイス市場をモビリティ(携帯性)とパフォーマンスという軸で見た場合、最もモビリティの高い一方でパフォーマンスが低いものがスマートフォン、最もパフォーマンスが高く、モビリティが低くパフォーマンスが高いのがデスクトップPCということができる。しかし、スマートフォンやタブレットの性能がどんどん向上し、現在では11〜14型のノートPCの一部はタブレットとほとんど性能的には変わらない状況となってきている(図1)。
この状況で、従来の14型以下のノートPCのモビリティを高めたとしてもタブレット市場との競合が厳しくなるだけだ。そこで同社では、これらの14型以下のノートPCを利用するどちらかといえば“ライトな作業”でPCを活用するユーザーではなく、デスクトップPCや14型以上のノートPCなど“ヘビーな作業”でアウトプットを求められるようなユーザーに絞り込み、そのポジションを狙うのがVAIOだと位置付けた。
VAIO 商品プロデューサーの伊藤好文氏は「“最高のアウトプットを求める人たち”に対し、“研ぎ澄まされた道具”としてのPCを届けたい」と述べる。その上でVAIOならではの強みとして「高密度実装技術」と「放熱設計技術」を挙げ、「これらで生み出した空間的な余力を、さまざまなパフォーマンスに変換することで、さまざまな価値を生み出していく」(伊藤氏)と話している。
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