次は自動車の話題です。ご存じのように、トヨタ自動車と世界首位のポジションを争っているのはドイツのフォルクスワーゲン(以下、VW)です。VW最大の特徴は、世界最大の中国市場で優位なポジションを築いている点です。速報では、2014年度のVW新車販売は368万台で2年連続中国シェア1位になっています。ちなみに2連連続の2位はアメリカのGMです。
VWのプレスリリースによれば、今後は日本車が圧倒的な市場占有率を持つ東南アジア市場に本格的に進出する戦略を打ち出しています。ちなみに、東南アジアの自動車大国であるタイやインドネシアでの2014年度の日本車シェアを見ると、タイでは約80%、インドネシアでは90%に達しています。
このインドネシアに、VWは中国のパートナーである上海汽車集団との合弁工場設立を発表しました。ポイントは中国企業とタッグを組んでのインドネシア進出です。真意は推測するしかないのですが、本来は単体での進出が十分に可能なVWが上海汽車集団と合弁を組むのは、中国で成功した新興国市場向け製品開発と製造モデルの横展開を目指してということではないでしょうか。迎え撃つ日系自動車メーカー各社もインドネシアでの増産、新規工場設立を打ち出しており、これから真正面のバトルが始まります。
最後の話題は消費財の代表である携帯電話端末を取り上げます。シャープは2015年3月期の連結事業見通しを、従来の300億円の黒字予測から、300億円の赤字予測に下方修正しました。その原因の1つとされているのは、中国メーカー向け中小型液晶パネルの低迷です。具体的には、携帯電話端末メーカー小米科技(Xiaomi)へのパネル供給で、日本政府が再生支援したジャパンディスプレイに後れを取ったことが原因と報道されています。米Appleでも韓国Samsungでもない中国の1携帯電話端末メーカーがそこまでの購買影響力を持っていることに驚きです。
また、Xiaomiはソニーの携帯電話の中国市場戦略変更の原因になったともいわれています。2013年までソニーのXperiaはハイエンドからローエンドまでフルラインアップ構成でしたが、Xiaomiの躍進があったことからローエンドを捨て、ハイエンドに特化する中国戦略を取らせたといわれています(関連記事:それでもソニーがスマホを再建しなければならない理由)。
2014年度の中国市場で携帯電話端末シェア首位になったと思われるXiaomiですが、他にも日本で知名度のあるLenovo、Huaweiなど大手メーカーがあり、しばらく前からASEANでもこうした中国ブランドを目にする機会が増えています。統計数字は手許に無いのですが、Samsung、LGと言った韓国ブランドに代わって、市場のボリュームゾーンでは低価格の中国ブランドがシェアを増やしているようです。
次回は「世界の工場」と言われた中国の製造業の現状を考察します。中国系企業が躍進する中、日系企業がおかれている事業環境、今後の考えられる戦略などについて紹介するつもりです。どうぞお楽しみに。
(株)DATA COLLECTION SYSTEMS代表取締役 栗田 巧(くりた たくみ)
1995年 Data Collection Systems (Malaysia) Sdn Bhd設立
2003年 Data Collection Systems Thailand) Co., Ltd.設立
2006年 Data Collection Systems (China)設立
2010年 Asprova Asia Sdn Bhd設立- アスプローバ(株)との合弁会社
1992年より2008年までの16年間マレーシア在住
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