「航続可能距離」は、現在の残燃料で後どのくらいの距離を走行できるかの目安を表示します(航続可能距離⇒「RANGE」という表示の場合もあります)。
この機能を成立させるためには残燃料の把握が必要となりますが、それはまた別の領域に入ってしまうのでここでは割愛させていただきます(車両側が残燃料をある程度把握できている前提で話を進めさせていただきます)。
航続可能距離を表示するに当たって非常に重要なのは「今走行している道路環境がどういった状況なのか」ということです。
例えば普段から燃費を重視した運転をしていて、結果的に平均燃費が20km/l(リットル)を達成している車両で、残燃料が20lだとしましょう。
平均燃費と残燃料を掛け合わせれば、この車両のポテンシャル的には約400kmを走行可能だと算出できますが、航続可能距離を表示するとなると問題点が1つ出てきます。
それは道路環境による燃費の変化です。
どれだけ燃費運転を心掛けていたとしても、高速道路で大渋滞に巻き込まれたり、山道を延々と走行しなければいけなかったりといった状況では、積算してきた平均燃費を大幅に下回ることは確実です。
残燃料が十分にあればそれほど深刻な影響はありませんが、仮に残り少なくてガソリンスタンドを渇望しているような状況ですと、航続可能距離で表示している数値というのは極めて重要です。
そこである程度の時間枠を定め、積算平均燃費とは別に直近の燃費状況を把握し、それを基に航続可能距離を算出する必要があります(例えば直近10kmの平均燃費など)。
さらに航続可能距離が頻繁に変化してしまっても混乱を招きますので、直近の平均燃費を基にした燃費ステージのような物を設定し、過剰に数値が変化しないような工夫も施されます。
例えば直近平均燃費が8〜11km/lであれば、航続可能距離として使用される燃費ステージは8.5km/lといった感じですね。
つまり前後1.5km/l程度の変化では表示を変化させず、燃費ステージが変化するような環境の変化が生じた場合のみ、航続可能距離が大幅に変化するという感じです。
いずれにしても刻々と変化する道路環境下で正確な航続可能距離を算出することは限りなく不可能ですので、余裕を持った給油が大切であり、あくまでも参考値だという認識は必要不可欠です。
最後に「各種警告メッセージ」ですが、各車種の装備によって表示パターンは無数にあります。ただし、どの車種であっても表示される警告メッセージの1つと言えば、ドアが開いていますという警告になるでしょうか。
他にもシステム異常を知らせる警告灯が点灯した際にブレーキシステムに異常が発生しましたや安全な場所に車を停止させてくださいなど、従来の警告灯だけでは具体的にどうしたらよいのか分からなかった状況でも、文字でドライバーに伝える事ができます。
これらのメッセージの種類などは全て取扱説明書に記載されていますので、一度は確認しておきましょう。
液晶ディスプレイ技術の進化や多重通信の普及などで、これから視覚的な演出領域はどんどん増えていきます。コンセプトカーでしかありえなかったような近未来的な演出も、量産車にどんどん採用され始めています。
事故の未然防止技術も含め、まだまだ見たこともないような演出がどんどん開発されていく領域ですので、これからの進化が非常に楽しみですね。
次回はエアコンシステムについて解説します。お楽しみに!
カーライフプロデューサー テル
1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車両検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にしたメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により、自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。
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