インドネシアの3つのカントリーリスクを洗い出す知っておきたいASEAN事情(20)(2/2 ページ)

» 2014年07月22日 08時00分 公開
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工業団地のコスト上昇

 2014年現在、インドネシアには約80カ所の工業団地があり、その70%がジャワ島にあります。ジャカルタ近郊には約40カ所の工業団地があるため、国全体の約半数の工業団地がジャカルタ近郊に存在することになります。

 2010年以降、二輪車や自動車などの輸送機器関連の進出が続いた結果、ジャカルタ近郊の工業団地の空きスペースはかなり少なくなっています。多くの工業団地が拡張計画を持っていますが、実際の開発は進んでいません。結果、数年前まで平均100〜150USドル/m2であった工業団地の土地価格は、現在250ドル強/m2まで上昇しています。

 慢性的な交通渋滞、また従業員の通勤の利便性の点から、ジャカルタに近いほど人気は高く、ジャカルタ近郊の工業団地は、ASEAN諸国の工業団地の中でも最も高価といわれています。実際のところ、中小企業にとっては、かなり厳しい価格水準です。そのため、進出企業にとっては、ジャカルタから離れた工業団地を選択せざるを得なくなっています。

photo ジャカルタ近郊の工業団地は街道に沿って展開している(クリックで拡大)

政治不安

 2014年7月9日に実施された大統領選挙は、両陣営が勝利宣言をする異常事態に陥っています。同年7月22日の公式集計の発表までさらに対立が深まる恐れがあります。インドネシアの選挙方法を批判するつもりはありませんが、なぜ選挙の集計に2週間もかかるのか疑問に感じます。長時間・密室で行う集計作業は、どちらが勝っても、両陣営にしこりを残すことになりかねません。

 現在のインドネシアの経済成長は、2004年の当選以来、2期10年にわたるユドヨノ大統領の安定した政治運営を背景に、外国からの投資が増加した結果であることは明白な事実です。ユドヨノ政権前のインドネシアは、経済面では1997年のアジア通貨危機の混乱から抜け出せず、また治安面ではイスラム原理主義者の爆弾テロが頻発しており、外国企業が積極的な投資対象として検討する状況ではありませんでした。

 一般的に新興国の特徴は変化スピードの速さです。過去10年のインドネシアの変化は、まさに新興国だから成し遂げられたのだと思います。現在のインドネシアは、インフラ整備、地域による経済格差、貧富差拡大など、早急に解決すべき課題が多くあります。過去10年の発展が、この先10年も続く保証はどこにもありません。果たして、次の大統領はどのような政策を実行するのでしょうか。発展途上国ではリーダーの資質がその国の成長に大きく関与します。今回のインドネシアの大統領選挙の結果、今後の政策運営には十分な注視が必要でしょう。


 次回のコラムではあらためて「タイ」を取り上げます。国軍によるクーデター発生後、落ち着きを取り戻したタイ。日本のメディアでは報道されない現地事情をお伝えします。キーワードは「国軍は政党か」です。お楽しみに。

筆者紹介

(株)DATA COLLECTION SYSTEMS代表取締役 栗田 巧(くりた たくみ)

1995年 Data Collection Systems (Malaysia) Sdn Bhd設立

2003年 Data Collection Systems Thailand) Co., Ltd.設立

2006年 Data Collection Systems (China)設立

2010年 Asprova Asia Sdn Bhd設立- アスプローバ(株)との合弁会社

1992年より2008年までの16年間マレーシア在住




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