さて、ここからは、ラオスがタイプラスワン戦略に適合するのかどうか、短所と長所から考察してみたいと思います。
一般的な海外生産拠点としては、ラオスは難しい問題を多くはらんでいます。しかし、タイプラスワンという観点で考えると、ラオスは有力な拠点になり得るということが今回のポイントです。
正直なところ、一般的な海外生産拠点としてのラオスには高いポテンシャルがないかもしれません。しかし、「タイプラスワン戦略」となると少し状況は異なってきます。タイに生産拠点を持つ企業が、競争力強化のため労働集約工程を分散させる戦略を取るのであれば、ラオスは大きな選択肢となりえます。本来、かなりマイナーな言語であるタイ語が通じると言うのは大きなアドバンテージと言えましょう。また、労働集約型の生産工程であれば、中心的な生産資源は人であり、ラオスの「背丈」にあった生産体制が敷けることも重要な要素です。
タイでは、田舎者のことを「コンラーオ(ラオス人)」とやゆします。タイ人のラオス人に対する“上から目線”は気になるところですが、タイが製造拠点としても競争力を保つためには、周辺諸国との連携は欠かせません。その中でも、「タイなくしての存在価値」が低いラオスは、タイにとっても戦略上かなり重要なパートナーであるはずです。どこまでタイ人が気づいているかは不明ですが……。
筆者は30年ほど前に、タイから陸路で首都ヴィエンチャンを訪れたことがあります。その際の印象は、街路樹が多く緑豊かな中に、仏教寺院、仏塔が点在する落ち着いた町でした。早朝には托鉢(たくはつ)をする僧侶と市民の姿が日常生活に溶け込んでいました。
最近のニュース画像を見ると、自動車の数が増え、よく見る東南アジアの地方都市然としています。あらためて、画一的な経済発展は、ラオスにとって本当に良いことなのか考えさせられます。
次回の知っておきたいASEAN事情では、ベトナムを取り上げたいと思います。以前にも取り上げましたが(関連記事:ベトナムは「チャイナプラスワン戦略」の選択肢なのか)今回はあらためて、タイプラスワン戦略と言う観点で紹介する予定です。お楽しみに。
(株)DATA COLLECTION SYSTEMS代表取締役 栗田 巧(くりた たくみ)
1995年 Data Collection Systems (Malaysia) Sdn Bhd設立
2003年 Data Collection Systems Thailand) Co., Ltd.設立
2006年 Data Collection Systems (China)設立
2010年 Asprova Asia Sdn Bhd設立- アスプローバ(株)との合弁会社
1992年より2008年までの16年間マレーシア在住
独立系中堅・中小企業の海外展開が進んでいます。「海外生産」コーナーでは、東アジア、ASEANを中心に、市場動向や商習慣、政治、風習などを、現地レポートで紹介しています。併せてご覧ください。
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