テラモーターズは、新開発の電動バイク「A4000i」を発表した。市販の電動バイクとして、「世界で初めてスマートフォンと連携する機能を搭載した」(同社)という。アジア市場で高級二輪車として拡販し、2015年末までに10万台を販売する計画だ。
電動バイクベンチャーのテラモーターズは2013年7月10日、東京都内で会見を開き、新開発の電動バイク「A4000i」を発表した。市販の電動バイクとして、「世界で初めてスマートフォンと連携する機能を搭載した」(同社)という。2013年末から、国内で宅配事業者向けに販売を開始した後、アジア全域に販売を拡大する予定である。国内価格は45万円。2015年末までに、スマートフォン連携機能を持たない「A4000」と合わせて10万台の販売を目標としている。
テラモーターズ社長の徳重徹氏は、「アジアの二輪車市場は拡大しているが、その一方で大気汚染や燃料の高騰に苦しんでいる。例えば、フィリピンでは大気汚染の影響で年間5万人が亡くなっていると言われているし、急増するインドの財政赤字は燃料の高騰が大きな要因となっている。排気ガスを出さず安価な電力で走行する電動バイクは、これらの問題を解決する有力な手段として期待されている」と説明する。
そこで同社は、急速に立ち上がりつつあるアジアの電動バイク市場を取り込むべく、今回発表したA4000iを開発した。徳重氏は、「A4000iは、日本のエンジニアが設計した高性能で高品質な電動バイクであり、世界で初めてスマートフォンと連携する機能も備えている。“カッコいい”バイクとスマートフォンが求められているアジア市場では、高いブランド価値を認めてもらえるはずだ。このA4000iを、ベンチャー企業としてスピードをもって販売展開し的確に需要を取り込んでいきたい」と語る。
なお、アジア市場でも、国内の45万円とほぼ変わらない価格で販売する計画である。「例えば、ベトナムでは3000米ドル以上の高級二輪車が市場の3〜5%を占めている。A4000iも、高いブランド価値を認めてもらうことにより、高級二輪車と同じ価格帯の製品として販売していきたい」(徳重氏)という。
テラモーターズは、2013年3月に発表した電動三輪タクシーをフィリピンで展開するなど、アジア市場での展開を強化している(関連記事:アジアを大気汚染から救うEV3輪タクシー、電動バイクベンチャーが新市場に挑む)。徳重氏は、「現在、EVベンチャーとして最も成功しているのはTesla Motors(テスラ)だろう。テラモーターズは、アジア市場の電動バイクでテスラのような存在になる。そして、私と同じ山口県出身である総理大臣の安倍晋三氏が、『アベノミクス』の第3の矢として掲げている『新たな成長戦略』の成功事例になってみせる」と意気込む。
A4000iは、外形寸法が全長1790×全幅750×全高1230mmで、重量が118kg。後輪に最高出力4kWのモーターを搭載しており、最高時速65km、15度までの登坂力を実現した。ガソリン二輪車では排気量125ccクラスに相当する。
コストパフォーマンスに優れた18650タイプ(直径18×長さ65mm)のリチウムイオン電池セルを用いた電池パックを搭載する。電池容量は48V40Ah(1.92kWh)で、満充電からの走行距離は65km(時速30kmでの定地走行時)となっている。充電時間は、家庭用の100V電源で約4.5時間。電池パックは取り外し可能で重量は16kg。単体での充電も行える。電池パックの寿命は走行距離で5万km。価格は「10万円程度を想定している」(徳重氏)という。
最大の特徴であるスマートフォンとの連携機能については、現時点ではAppleの「iPhone」にのみ対応する予定。車両との接続は、Wi-FiもしくはBluetoothなどの無線通信を用いる。A4000iへの乗車時に、一般的な二輪車でメーターなどがある部分にiPhoneを止め具で横方向に固定しておけば、連携機能によってナビゲーション画面や電池残量などが表示される。これらの画面表示は、独自開発のiPhone向けアプリで実現する。
他の連携機能では、ユーザーのプローブ情報などを用いたサービスなども検討している。ただし、発売当初はプローブ情報を取得するだけにとどめる予定だ。プローブ情報をある程度蓄積した上で、電動バイクのユーザーに最適なサービスを提供したいという。
また、A4000iのスマートフォン連携機能は有線接続を用いていないので、連携対象のスマートフォンに関する制約は少ない。このため、iPhoneだけでなく、将来的にはAndroidスマートフォンへの対応も可能だとしている。
アジア市場で拡販を目指すA4000iだが、販売開始は国内市場からとなっている。2013年末から限定2000台で販売を始める。スマートフォン連携機能を持たないA4000は2014年春から販売する。
主な市場として想定しているのは、宅配などに用いられている業務用二輪車である。現在、業務用二輪車は、国内で年間5万台が販売されている。徳重氏は、「高齢化が進む日本では、宅配事業がさらに拡大するだろう。その宅配に用いる二輪車の課題は、騒音や経済性である。電動バイクであるA4000iとA4000は、走行時の騒音がほぼなく、走行距離1km当たりのコストはガソリン二輪車の10分の1と少ない。国内の二輪車市場は年間30〜40万台で安定しているが、業務用電動バイクは成長余地が十分にある」と述べる。
また、A4000iとA4000の国内販売店については、「各都道府県につき2〜3店舗に限定したい。販売台数を見込めると同時に、サポートもしっかりしてもらえる店舗を厳選してお願いしようと思っている」(徳重氏)という。
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