年棒をアップさせる切り札がなくなり、イチロー選手は自らチームを去りました。「ダメだ」と判断したとき、なるべく早期に去るのです。彼が選んだチームは、実績や成果を非常に重視するヤンキースでした。
イチロー選手は、ヤンキースという新たな受け皿の中で、再び、自分の一番目の切り札から披露していくでしょう。ただし、それが可能なのも「旬なうち」です。もしイチロー選手が、いつまでもマリナーズにしがみつこうとすれば、やがて旬ではなくなり、受け皿はなくなるでしょう。
ぬおぉぉぉぉ! オレサマも、シらめいたぜぃ! 隣国の技術者全員が「イチロー」なんだなぁ!
甚さん、そうですね。「野茂、新庄、イチロー、松井」と「隣国巨大企業」の共通キーワードも、「年棒制」です。そして評価の対象は、個人ではなく「チーム貢献度」「企業貢献度」です。
イチローのニュースを見て、僕も奮い立ちました。早く今の会社を辞めて、隣国企業へ転職した方がいいって。このまま、あんな“出世逃げ課長”の下にいたら、いつまでも、設計アシスタントのエリカちゃんを抜けません。年棒制で自分の実力を知りたいのです。プロ野球の選手のように。
出世逃げ課長とは、「出世してしまえば、検図ができないことなんか関係ないし、直属の部下を捨てることができる」なんて言っていた、無責任な良君の上司です。
そうか、荒波にもまれてみたいのかぃ。しかし、オメェの今の実力では、結構厳しいぞ。居心地のいい日本企業に、すーぐ逆戻りする羽目にならあな。
ううう、そうか……。でも、いつかは……! ふぬぬガッテン承知! しばらく甚さんの下で修行を積みます。ですから今後もよろしくお願いします。
そんじゃよぉ、早速いくかぁ! また、DIY店にあった部品で解説しようじゃねぇかい。
既に出てきた図1〜5は、DIY店で実際に販売されている「耐震用補強板金」(図7)をモデルにして解説したものです。
図8は、DIY店内の同じ棚にあった、図7の板金と同じ役目の補強材です。この図では「三角リブ」について説明しています。
そんじゃ、良君! まずは、図8の「目的」という箇所を読め。これが三角リブの役目! これが「低コスト化設計の実務手段」! 料理に例えるなら「調味料」だ! 学問と実務の相違を理解しろーっ!
ガッテン承知! しばらく甚さんの下で修行を積みます。ですから今後もよろしくお願いします。
ん? そのせりふは、さっきと全くおんなシだぜぃ?
ん? ありゃりゃ?
ふざけてんのかー! 何度も同じことを言うなっ! 分かったら「ハイ!」と言えーっ!!
ハイィィィィッ!
図中に「三角リブ」と書いて位置を示し、板厚(t)に則した公式「最大幅=4t」「寸法=2t」で寸法を決めて、それをカッコ寸法(参考寸法)で書けば、そんでおしめぇだぁ。どうだ、ワイルドだろーう?
えー、これって金型が必要になりますよね? 金型って結構高いんでしょう? かえってコストアップになるのでは?
大抵の加工屋で、その型は既に持っているから、費用はいらねぇーはずだ。
えー、でも持っていなくて、金型費を請求されたら、どうすればいいんですかー。そのときは甚さんの責任で、払ってくださいよ。
ぶぇっ、べらんめぇ! 型を持っているところに発注すればいいだけだろがぁ〜、あーん? そんなことでオメェ、本気で隣国の企業へ転職できると思ってたのかよーっ! そんなんじゃ無理、ずぇーったい無理ーーーーっ!!
……やっぱり今回も、怒られて終わるのね。
◇
せっかくいいところまで分析できたのに、最後は甚さんを怒らせてしまった良君なのでした……。次回も引き続き、甚さんに板金の低コスト化設計について解説してもらいましょう。
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。
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