三角リブは低コスト化設計の“調味料”甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(3)(2/3 ページ)

» 2012年08月10日 11時00分 公開
[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),@IT MONOist]

 重要な実務知識ですから、ここで「設計サバイバル術」を復習しておきましょう。連載「甚さんの設計サバイバル大特訓」の第1回、4回を読み返してみてください(以下、関連記事)。


 図4は、上の記事にも出てきた重要な「設計サバイバル術」の構成図です。

図4 設計サバイバル術の構成(「ついてきなぁ! 加工部品設計で3次元CADのプロになる!」日刊工業新聞社刊より)

 設計サバイバル術における「設計サバイバル知識」は、たった1つだけ。「断面急変の探索スキャン」です。前ページ図3の手段そのものです。

 断面急変部を探索した後はどうするのかといえば、「設計サバイバル道具」で補修するのです。道具は「大道具」と「小道具」に分類されます。それが何なのかは、図5を見てみましょう。

図5 設計サバイバル術の知識と道具(「ついてきなぁ! 加工部品設計で3次元CADのプロになる!」日刊工業新聞社刊)

 図5の「大道具」に「Rの設置」があります。Rを「円弧」と考えれば、前ページ図2の最終案は小学生でも思い付くはずです。

甚

すンばらしーい!



デキるヤツこそ、年棒制?

 筆者は、ほぼ毎月、隣国の巨大企業を訪問しています。過去記事でも何度か出てきた“ある現象”をもう一度紹介しましょう(図6)。

図6 日本と隣国におけるモチベーションの差(「ついてきなぁ! 設計トラブル潰(つぶ)しに『匠の道具』を使え!」日刊工業新聞社刊より)

 筆者は、中国、香港、韓国でも「超低コスト化手法」や「トラブル完全対策法」のセミナーやコンサルテーションを実施しています。これらの国々で開くセミナーでは、受講席が最前列から埋まります。セミナー開始1時間前から、最前列の取り合いです。

 しかし日本で開催する場合は、部屋の後ろ、しかも、その両端から埋まります。「心理学の観点では『やる気のない席』である」と新人コンサルタントが真っ先に学ぶ知識でもあります。

 2012年7月末に、「出世を拒否する社員」「一生平社員を望む若手社員」について報じた記事が出ていました。このような状況で「グローバルで戦え!」というのですか? 「大学の9月入学制度」「全社英語化」で戦えるのでしょうか。

 さて、“最前列の席から埋まる”隣国の技術者たちは、同時通訳を介して筆者の話を必死にメモしていました。なぜならば、「個人ノウハウ集」を蓄積するためです。

 以下は前回の記事からの転記です。

前回より転記(1)

 年棒をアップさせる切り札がなくなったとき、彼らはその会社を自ら去ります。「ダメだ」と判断すると、なるべく早期に決めるのです。

 それができるのは、外部に「受け皿」があるからです。

 その受け皿の中で、再び、自分の「一番目の切り札」から披露すればよいわけです。ただし、それも自分自身が“旬なうち”です。「早期」の理由が容易に理解できるでしょう。

良

あ、ここ。前回の僕は、フムフムとしか思わなかったけど、やっと分かったんです。「切り札」の源泉が。彼らが必死にメモを取るのは、個人ノウハウ集を蓄積しているから。つまり「個人ノウハウ帳」を作っていたんですね。


 良君、その通りです。最初は「私って人気者!?」と思ったのですが、そうではなかったのです。日本人コンサルタントが6時間(1日コース)、12時間(2日コース)と話すなら、その中に「切り札」となるネタが幾つか出てくるだろうと、一生懸命メモを取っていたのですね。

甚

さすがは院卒! よく分かってるじゃねぇかい。隣国巨大企業って、ワイルドだろーう? しっかしよぉ、今の日本企業衰退は「根」がふけぇ〜ぞ。


良

またちょっとほめられたぞ! ちょっと調子乗っていいかなぁ……。


甚

そうだ良君! 「会社を辞めたい」と言っていた件は、どうなったんだ?


良

その件なのですが、実は、あまりにもタイムリーなニュースを読んだんですよ。いやあ、刺激を受けましたね。メジャーリーガーのイチローのことだったんですけど……。


甚

ああ。イチローが、シアトル・マリナーズからニューヨーク・ヤンキースへ移籍した件か? あれが「ワイルド」って言うんだぜ〜ぃ! そのインタビューの2時間後、ヤンキースの選手として、古巣のマリナーズとの対戦試合に出場していたな。でも、それがなんでタイムリーだったんだ?


良

えっと、どこから話せばいいかな……。まず思い出したのは、前回出てきた、このことだったんですね(以下、転記2)。


前回より転記(2)

 隣国技術者は約10年残り、日本人技術者は2年で企業を去ったと聞いています。

 これを「成果主義」「実力主義」といいます。とてもフェアな制度です。共通のキーワードは、「年棒制」です。かつての野茂選手や新庄選手のようなプロ野球選手も同様ですね。

良

「野茂選手と新庄選手」を「イチロー選手と松井選手」に置き換えると、メジャーリーグ12年目のイチローと、10年目の松井はこの先……もしかして……。


甚

おぉ! 今はよぉ、イチローも松井も“絶不調”だぁ。いずれ、野茂と新庄が歩んだ道をたどることになるのかもな……。


良

そう、最近のイチローは、あまり調子が良くなかったんです。


 次に、「転記(1)」の「年棒をアップさせる切り札がなくなったとき、彼らはその会社を自ら去ります。『ダメだ』と判断すると、なるべく早期に決めるのです」と、「転記(2)」の「隣国技術者は約10年〜共通のキーワードは、『年棒制』です」に注目してみてください。

良

これこれ。イチローのトレードの件みたいだなって、思ったんですよ。


 イチロー選手は、マリナーズでの“切り札”がなくなったのでしょう。

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