先輩たちには内緒だぞ! 甚さんがデキる設計者として生き残るためのテクニックを伝授する。まずは断面急変の探索から!
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
前連載「甚さんの設計分析大特訓」のご愛読に心から感謝いたします。さて、その最終回の冒頭では……、
昨今、社告やリコールの新聞記事がない日が珍しいくらい商品の品質が低下し、収まるところを知りません。
と書きました。
商品の社告やリコールが再び増加しています。しかも、最近の特徴は、企業名が特定していることです。その企業を可能な限り観察すると、「100年に1度の大不景気」が原因とはいえ、企業の利益ばかりを追求しているため、安全への気配りに手抜きが生じているためと分析しました。
CMや企業理念では、コンプライアンス、地球環境などを唱えていても、それは偽りと理解されても仕方がありません。安全への気配りができない企業が、コンプライアンスや地球環境への気配りができるはずがないからです。そして、政治家でもなく、評論家でもない、われわれ技術者のできること――それは、いま一度、技術の基本に戻ることだと思います。
今回からスタートする「甚さんの設計サバイバル大特訓」でも、機械設計・機械技術の基本に戻ります。この基本が、安全や地球環境、そして、あなたのお客さまの利益に結び付けばと思います。どうぞ、ご期待ください!
べらんめぇ! オメェ、MONOistの『経験10年の設計者の働き口がないなんて』ってぇ記事を読んだかぁ? あん?
ええ、読みましたよ。それがどうかしましたか?
どっ! ドッ! どどどどどうかしただとぉッ!? ちょいと休んでいる合間に、再びノーテンキな大学院卒に戻っちまいやがったなぁ、テンメェは……。 あの記事読んでなんとも思わねぇってのかよ?
え!? ……あっそうだ! 僕と同じ、材料の知識がない設計者がいて、良かったなぁって安心しました。
あっ、あんし……ッ! ふざけるのもタイガイにしやがれゴラッ!
ゴツン! ゴツン! ゴッツーンッ!!
……甚さん名物!? 鉄拳制裁です。
ア、アイタタタッ! 父親にもぶたれたことないのにっ!
まーたそのセリフかいっ! オレサマは江戸っ子でいっ! ガンダムはちょいと飽きてきたってぇもんよ。いまから、仕切り直せ! これは命令だぞっ!
はっはひーっ! 分かりました!! ……えっと、材料を知らない技術者の設計なんて、寿司にチョコレートを塗るようなもんです。
例えばよぉ、そんなヤツが寿司屋の小僧に弟子入りしたとしてよぉ、オヤッサンに『卵、買ってこい!』といわれてだよぉ、オメェ、うずらの卵買ってきてどうすんのよ? あん? ……ってぇ話だ。
甚さんのいうとおりです。
そば屋もラーメン屋も寿司屋も、商売をするためには、食材の知識が必要です。機械設計技術者もそれと同じで、非常にレアな材料の知識は知らなくても、一般的な板金材料、樹脂材料、切削材料、そして、勤務先特有の材料ぐらいは知っていなければいけません。
食材(材料)のことをよく知らない店主の店なんて、「うまくて行列のできるお店」ではなく、「クレームで行列のできるお店」となるでしょう。
このように 筆者は技術者という職業をよく“料理人”に例えます。また、図面から製造される部品や商品を“料理”に例えます。
よぉ〜し、分かった! 材料に関しては、将来に準備すんからようぉ、まずオメェの大好きな3次元CADを利用した設計の基礎をやろうじゃねぇかい。
甚さん、ちょっ、ちょっと待ってください。確かに僕は3次元CADが好きなんですけど、実はあまり使いこなせていません。むしろ得意なのは設計アシスタントのエリカちゃんの方なんですけど。
エッ? オメェ、富士山麓大学の大学院を出てきたんだろう? 6年間も大学に通っててよぉ……。オメェ、悪いこといわねぇから、専門学校に再入学しろ! いますぐ、いますぐに願書準備ーッ!! ンガーッ!
ちょっ、それ無理―ッ!! ……ウチの課長なんか、図面描けない、検図できない、特許読めない、設計審査できない……それでも設計課長なんですから。
あ、それは前に聞いたな。そういや、最近はどうなんでぃ?
相変わらず『管理能力と英語で出世しろって』っていっています。『これが、当社の成果主義による新人事制度だ。徹底的に利用して出世しろ!』って毎日ね。それで、来年は部長昇格ですから。
技術もなければ、人事もアホかぁ? よぉーっしゃ、分かった! 良君、その会社、とっとと辞めちまえようっ! オレさまが引き取ってやらぁ! オメェの大好きな3次元CADを利用した設計の基礎をやろうじゃねぇかい。
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