また先ほどのように料理で例話をしてみましょう。「この鯵(アジ)を3枚におろせ!」といわれたら、目の前の鯵を縦か横に3分割すればよいと想像できます。しかも、「枚」という単語からは、縦に分割するのではなく水平に3枚分割すればよいのだと気が付きます。
気が付かなくとも、料理学校や書籍やビデオ教本など十分な環境が整っていて、手取り足取り教えてくれます。昔から料理関連は、非常に充実した学習環境が整っています。ですが機械設計の世界では……
確かに僕は、仲間に釣られて大学院までずるずると進んでしまって、まったく実務を勉強していません。自分でもまずいと思って、機械設計について自習してはいるんですが、料理本みたいに良い本がないんです。
そうだったか! いまも自己研鑽(じこけんさん)を続けているとは、たいしたやつじゃねぇかい。それなら、院卒だからといって自分を卑下することはないぞ! だが、いまの世の中、学歴は関係ねぇ。高卒や専門学校卒の連中に負けるなっ! じゃ、いまからいくぜぃ!
例えば、機械設計の初心者が、以下のようにいわれて、いきなり設計できるでしょうか?
その答えは、「不可能!」です。
彼らは、図1の左側のように、頭の中に浮かぶ形状をそのまま3次元CADでモデリング(造形)して図面化してしまうのが現実です。
そして、図1の「初心者の設計」から「ベテランの設計」に到達するには、なんと最低で10年はかかってしまうといわれます。ですが、この連載を読み進めていけば、甚さんがあなたをベテランの設計への近道へと導いてくれることでしょう。
そんじゃいきなり、即戦力となるためのコツを教えてやらぁ! それは『断面急変』だ!
だっ! ……ダッ! ……ダンメンキュ〜ヘン? 大学院でも学びませんでした。ぜひ教えてください。
ゼシ! といわれちゃ仕方がねぇ。オレサマに……ついてきなぁっ!
「断面急変」とは「設計サバイバル術」のいわば骨格。さあ、機械設計のすべてをフォローする「設計サバイバル術」で、10年先輩を一気に追い越してみせましょう!
この特訓は、僕の先輩たちにはどうか内緒にしてくださいね。死ぬ気で頑張りますから!
断面急変部を探索せよ!
それでは、甚さんのいう通り、いきなりの例として図2に示すL字型板金で「断面急変」の設計サバイバル術を実行してみましょう。
3次元CADの断面作成機能を使い、いくつかの断面を切りながら(切る位置を動かしなら)変化を見ていくのです(ここでは、この作業を「スキャン」と呼んでいきます)。まず、「断面急変部」を探索するために、断面をX方向から徐々にスキャンしていきます。次に、断面をY方向から徐々にスキャンしていきます。
どうだ! 3次元CADの断面作成機能を駆使したベストウェイじゃねぇかい。院卒の頭なら、即、理解できるだろうがぁ! あん?
だっ……断面急変! これが、実務かっ! これが、職人ワザかっ!
コラコラ! 感激するのは、まだ早いぞ。
これから、具体的な探索スキャン例について、次のページで説明します。
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