そこで、リンクの支点部にフリクション(摩擦力)を与えることにより、自由な位置で停止させる機構として使うことができます。また、ばねを仕掛けることにより、常に折りたたまれた状態になる、あるいは常に伸びきった状態になるように設計すれば、自由端である駆動ポイントに動作を与えても、除荷すると元に戻るような機構へ発展させることができます。
地面に固定し自立させて使う場合は、図4に示す多節リンクのパンタグラフ機構を使用します。送りねじを使ったパンタグラフは、自動車に車載されているジャッキで採用されている構造です。
四節リンクは、秤(びん:測り)として利用することもできます。一本棒のつりばかりでは、測定対象物の重量が同じでも、一本棒の回転支点から作用点までの距離が異なると、図5のように釣り合いは崩れてしまいます。
物体を掛ける位置がX=Yの場合、左右の物体の重量が等しければ天びん棒は釣り合います。ところが、物体を掛ける位置がX<Yとなった場合、左右の物体の重量が等しくても、掛けた位置の距離が長い方へ傾きます。これは回転モーメントによって得られる回転力(トルク)の勝ち負けによるものです。
平行四辺形に配置したリンクは測定物の重さが等しければ、回転支点から左右異なった位置に物体を掛けても釣り合い、偏芯荷重の影響を打ち消し合うことができます。その機構を図6に示します。これは数学者のロバーバルが考案した機構で、はかりの原理として現在の電子天びんなどにも用いられています。
No.14と同様に、一本棒の上皿天びんでは、測定対象物の重量が同じでも、一本棒の回転支点から作用点までの距離が異なると釣り合いは崩れます。物体を置く位置がX=Yの場合、左右の物体の重量が等しければ上皿は釣り合います。ところが、物体を置く位置がX<Yとなった場合、左右の物体の重量が等しくても置いた位置の距離が長い方へ傾きます(図7)。
平行四辺形に配置したリンクは測定物の重さが等しければ、回転支点から左右皿の上の異なった位置に物体を置いても釣り合い、偏芯荷重の影響を打ち消し合うことができます。その機構を図8に示します。
No.12の駆動リンクと従動リンクが等長で中間リンクを交差した場合、パッと見は対角線上で対称レイアウトであるため、等長の駆動リンクと従動リンクが同期して動くと思いがちですが、それぞれの回転角度に差が発生することが理解できたでしょうか。
日常生活の中でも比較的目にすることがあるパンタグラフでは、四節リンクではなく多節リンク構造のパンタグラフが多いことも分かりました。リンクを平行四辺形にレイアウトすることで、偏芯荷重の影響を打ち消し合うことができる秤として利用できることも知りましたね。
四節リンクを設計する場合、原理原則に従い構造を決めていかなければ、不具合が発生する可能性が大きくなります。不具合が発生しないか、仮設検証力を向上させてリンク設計に挑む姿勢が重要です。
次回は、四節リンクを使った航空機の車輪格納機構に特化して、動作特性や特徴を確認してみましょう。(次回に続く)
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