VR(仮想現実)
「VR」は“Virtual Reality”の略称で、「ブイアール」と読む。日本語では“仮想現実”と訳される。一般的にVRは、コンピュータに接続された専用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)越しに、3Dのコンピュータグラフィックス(CG)データを眺めることで、仮想的な空間に没入できるシステムである。
一方、実際に見えている現実空間に、3D CGで作られた仮想的なモデルなどを重ね合わせるシステムのことを「AR(Augmented Reality:拡張現実)」と呼ぶ。また、ARを高度に発展させたシステムとして「MR(Mixed Reality:複合現実)」も存在する。これら技術(VR、AR、MR)を総称して「xR」と呼ぶ。
VRという言葉が世界で初めて登場したのは1989年のことで、VPL Researchの創業者であるJaron Lanier氏が提唱したとされる。その後、1990〜2000年代にかけて、一般消費者向けのゲーム機の新技術として発展したものの、関連技術の研究、製品開発は徐々に下火となっていった。ここまでが「第1次VRブーム」である。
その後、Palmer Luckey氏が開発した広視野角のHMD「Oculus Rift」が登場したことで、VRブームが再度訪れた(2014年ごろ)。このOculus Riftを皮切りに、さまざまなメーカーから数万円台のHMDが販売されるようになった。HMDの発売ラッシュとなった2016年は「VR元年」と報道されるほどだった。
近年、VR技術は、ゲーム以外の分野(ノンゲーム)での活用に注目が集まりつつあり、建築・土木や製造業においても事例が少しずつ見られるようになった。製造業においては、製品カタログ、設計レビュー、作業マニュアル、保守マニュアル、安全教育などでの活用が広まっている。従来のディスプレイ技術では、3D CADで設計した3Dデータであっても、結局は2D(フラットな)の画面で形状を確認するにとどまっていた。VRであれば、3D CGの仮想的な空間に没入し、実物大で対象の3Dデータを確認できることから、検証品質の向上や新たな気付きが得られる点などが期待される。
VR空間に表示する3Dデータはポリゴン(CG)であるため、3D CADによる設計データ(ソリッドデータ)をコンテンツとして用いるには、変換や編集が必須となる。従来、こうした作業には専門スキルが必要とされてきたが、簡易にコンテンツ変換できる仕組みや3D CAD向けのディスプレイシステムなども登場しつつある。
ちなみに、バーチャルリアリティーに関連する技術と文化に対する貢献を目的に設立された日本バーチャルリアリティ学会(VRSJ)は、“仮想現実”という日本語訳に関して、「バーチャルが仮想とか虚構あるいは擬似と訳されているようであるが、これらは明らかに誤りである」との見解を示している(参考リンク:バーチャルリアリティとは|日本バーチャルリアリティ学会)。
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