表面粗さ
「表面粗さ」とは、物体(部品)の表面形状(面の肌)に関して規定する尺度のことである。設計者が規定する理想的な表面形状に対して限界値を定める。表面粗さは日本工業規格(JIS規格)において「JIS B 0601-2001」および「JIS B 0031:1994」で定められている。部品の表面粗さは、表面粗さ測定機(粗さ計)で測定して評価を行う。
例えば、部品表面の傷、打痕、切削加工時の加工痕(筋目など)、あるいは傷を避けてほしい箇所、機構の摺動(しょうどう)部となる部分について指示を行う。なお、表面粗さの表現では、切削加工のことを「除去加工」と呼ぶ。これに対し、「非除去加工」は塑性加工や鋳造など、部品を削らない加工を示す。
表面粗さは記号を用いながら指示する。除去加工に関しては、「除去加工の要否を問わない」「除去加工を要する」「除去加工は不可」の3種類の記号で指示する。
表面性状のパラメータについては、以下のように記号に横線を書いて指示する。記号の中では、最終工程の加工方法、粗さを示すパラメータと数値、筋目方向を指示する。
粗さの数値については、基準長さの範囲で、粗さ曲線および平均線を基に、「最大高さ(Rz)」もしくは「算術平均粗さ(Ra)」を指示する。数値の単位はμm。Rzは粗さ曲線の平均線を基準とした最高値と最低値(山と谷)の値を合計した数値である。Raは平均線から粗さ曲線(測定曲線)までの偏差の絶対値における平均値である。
加工方法については、名称もしくは英訳の頭文字を取る。例えば、フライス加工は「Milling」なので「M」、旋削(旋盤加工)は「Lathe Turning」なので「L」、研削(グラインダ)は「Grinding」で「G」である。
筋目方向については、記号を指示した投影図を基準にし、筋目が平行か垂直か、あるいは交差しているかを定める。
なお、JIS規格における表面粗さの指示法は2002年に改正があり、記号や値の指示方法が変更されている(本稿は2019年10月時点の内容を基に執筆)。
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