データム
データムは、幾何公差において部品加工や測定などで基準となる面や線を示す。データムは、設計物の機能や組み立てを考慮して、設計者が定めるものとする。
日本工業規格(JIS)の「製図−製図用語、JIS Z 8114:1999」においては、「形体の姿勢公差・位置公差・振れ公差などを規制するために設定した理論的に正確な幾何学的基準」としている。データムは、形状公差および輪郭度以外の全ての幾何公差において指示する。
データムは、英語の“datum”をそのまま片仮名読みした語句である。国際標準化機構(ISO)の定義に基づいた用語であるところに由来する。ISOにおいて、datumの定義は「ISO 5459:2011:Geometrical product specifications(GPS)−Geometrical tolerancing−Datums and datum systems」で定められている。
データムの指示は、上向きの三角記号で行う。三角は黒く塗りつぶす場合と、白抜きの場合とがあるが、いずれかで構わないとしている。視認性などの観点から、黒く塗りつぶす場合が多く見られる。三角の底面側を、データムとなる面や線、寸法指示に配置する。三角の頂点から線を1本引いて、正方形の枠で「A」や「B」などのアルファベットの1字を示す。このように、三角と四角い枠を線でつないだ記号を「データム記号」と呼ぶ。
幾何公差の記入枠においては、データム記号で指示されたアルファベットによって「基準がどこになるか」をシンプルに示した上、幾何公差の記号と公差の数字を併記する。データムのアルファベットは複数指示できる。この場合、左から優先順位の高いものを並べていく。
単一形体に対してデータムを指示することが多いが、2つの異なるデータムを1つの共通データムとすることも可能である。アルファベットを「A−B」というようにつないで表現する。
データムはあくまで理論的な概念であり、データムとして指示された実際の形状(部品の実物など)がそれを完璧に再現できるわけではない。よって定盤など精密な形状を代替基準として測定することになる。それを「実用データム」と呼ぶ。
データム形体の面を規定する際は、「データムターゲット」の指示を行う。例えば、部品加工の場合、データムターゲットとなる点や領域における加工精度を厳しく管理することで、部品が仕上がった後の測定時にデータム形体として活用する。データムターゲットの指示に基づいて作成したデータム形体に、実用データムとなる定盤を当てて測定する。
測定時にX、Y、Zの3平面を完全拘束して姿勢を固定する場合は、「三平面データム系」を用いる。この際、3つの平面の精度を満遍なく高めていくことは非常に困難である。そこでデータムターゲットの指示を行う。
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