インダストリー4.0
「インダストリー4.0」とは、製造業におけるコンピュータやIT、インターネット通信などを駆使した産業および社会構造の変革の取り組みを示す。日本語訳は「第4次産業革命」。従来、「産業革命」は18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業や社会の革新フェーズについて、第1次から第3次までのステップを設けて表現していたが、さらに時間軸を拡大して未来へ向け、「第4次」のステップを表した。
- 第1次産業革命(1700年代半ば):家内制手工業の発達、水力や蒸気機関による工場の機械化
- 第2次産業革命(1800年代):電力などの動力を用いた大量生産の実現
- 第3次産業革命(1900年代):コンピュータを用いた生産工程の管理および自動化
- 第4次産業革命(2010年ごろ〜):ビッグデータやインターネットによる産業構造や社会の変革
インダストリー4.0は、ドイツ政府が2011年11月に公布した戦略的技術政策「High-Tech Strategy 2020 Action Plan(高度技術戦略の2020年に向けた実行計画)」の中で出されたコンセプトで、同年ドイツで開催された産業機械の見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」でも発表された。現在は世界各国に広まっている。
インダストリー4.0の取り組みを説明する際には、「サイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System)」という言葉が使われる。「サイバー」はコンピュータの中のデータが作り上げる仮想世界のこと、「フィジカル」は実機や人が存在する現実世界のことを指す。この両者をセンサーとインターネットを用いて接続することで、ロボットを用いた高度な自動化や、リアルタイム性の高いデータ連携および予想/分析を実現する。そのカギとなる技術として「IoT(モノのインターネット)」「ビッグデータ」「AI(人工知能)」「ディープラーニング」などがある。これらの技術を駆使して、製品の生産だけでなく、市場分析、営業、販売、保守まで製品のライフサイクル全体を包括してデータ連携し、従来とは大きく異なったビジネスの仕組みを実現する。
インダストリー4.0による取り組みを推進することで、顧客個別に最適化した製品が素早く実現できるため、従来の大量生産、大量消費から、一品一様のカスタム製品を大量生産(マスプロダクション)の生産性で実現するマスカスタマイゼーション時代へのシフトを促すとされている。
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