デジタルツイン
デジタルツイン(Digital Twin)とは、文字通り“デジタルの双子”を示す。「デジタル(digital)」は、コンピュータの中のデータやモデルを示す。その対義語となる「フィジカル(physical)」は、現実世界の実機や実現象、人間などを示す。デジタルツインとは、現実世界にある実機や事象をコンピュータ内のデジタルデータで忠実に再現し、かつそれぞれの世界の状態や挙動がリアルタイムにリンクし合っている状態を指す。
デジタルツインは、現実の世界の現象をデジタルで再現するシミュレーションの進化形ともいえる。従来のシミュレーションの要素に、リアルタイム性が加わっている技術である。一般的なシミュレーションが入力値を計算して現象を再現する受動的な存在であるのに対し、デジタルツインは実機などの情報を常に取り込みながら能動的に現象を再現する存在であるといえる。
デジタルツインの基盤となる技術は、インターネットやクラウドコンピューティング、通信技術、センサー技術、あるいはそれらを包括するIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)、ディープラーニングなど、2000年以降で高度に発展した技術を駆使することにより実現できる。デジタルツインのバックグラウンドとなる技術は現在も発展途上である。
IoTの基盤技術として説明される「サイバーフィジカルシステム(CPS)」は、ほぼデジタルツインと同じ意味である。CPSは、より個別の指標におけるデータ活用のサイクルを示しており、デジタルツインはそのデータの集合体としてサイバー(デジタル)空間に再現した物理モデルを意味することが多い。
デジタルツインの価値の1つとしては、実機や人の情報を遠隔地から把握しながらその場で分析が行える点である。単に遠隔地から動画を監視することと大きく異なる点は、さまざまなデータをリアルタイムに取得することで分析や予測が行える点である。デジタルツインは、業界を問わずさまざまな分野での活躍が期待されている。
製造業においては、デジタル側のデータとして、CADやCAE(シミュレーション)、PLMと連携させるコンセプトが目立つ。活用目的として、試作レスの実現や、製品設計や改良、予防保全など、これまでのプロセスやビジネスを大きく変革するものとして注目されている。
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