ロバスト設計
「ロバスト設計」とは、製造時や市場投入時において、製品がさまざまな誤差要因(ばらつき)を含んだり、厳しい使用条件にさらされたりしても、常に安定した性能が保てるように設計を行うことを意味する。品質管理手法である「タグチメソッド」の概念の1つである。
「Robust(ロバスト)」は、“頑丈な”“頑強な”という意味の形容詞。その名詞形である「Robustness(ロバストネス)」は、“頑強性”“構造安定性”などと訳される。「ロバスト最適化」は、ロバストネスが確保できる最適なモデルやパラメータを得るための技法を示す。ロバストやロバストネスは、設計製造の他、コンピュータプログラムなどの情報工学、統計学、経済学、生物学といった幅広い分野で用いられる概念である。
なお、ロバストネスという表現が製品設計で用いられる場合、“頑強”といっても、構造的に(強度的に)頑丈(丈夫)に製品を作ることを意味するわけではなく、製品性能的に“頑強な安定性”を確保し、信頼性を向上させることを示す。ロバスト設計では、製造時の誤差を撲滅しようとするのではなく、むしろ「誤差は付き物だ」という前提において、どのように誤差を制御するか、あるいはその影響を極力小さくするかを考えていく。
つまり、ロバスト設計は、設計開発の前半で、製造時に想定できるばらつきを考慮して、目標の品質や性能を達成できるように進められる。故に、設計開発の後半、つまり設計後の試作や生産準備の段階で品質を確保する、いわゆるすり合わせ方式の設計開発では成り立たないプロセスである。
日本企業の多くは、すり合わせ方式が過去より主流であったため、ロバスト設計を推進する際は、設計開発プロセスや組織そのものを大きく変えなければならない。また、ロバスト設計の体制を作るに当たっては、ロバスト設計に詳しい解析専任者などの専門家の配置や育成が課題となる。
ロバスト設計の解は、大量のデータを統計学的に処理することで精度が高まることから、シミュレーションソフトウェアを用いて最適解探索を実施する。
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