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いまさら聞けない!? 製図の素朴な疑問たち「技術の森」モリモリレビュー(5)(1/3 ページ)

「外形線と寸法補助線は接して描かなければならないのか」「φは『パイ』と読むのか」などいまさら聞けない素朴な質問ばかりを集めてみた。

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 今回は前回までとは趣向を変え、「技術の森」から複数の質問をピックアップしてみた。これらの共通点は、「素朴な疑問」であること。いまさら恥ずかしくて聞けない、あるいは誰かに聞かれたらうまく答えられないかもしれないことを集めてみた。さて皆さんは、部下や後輩から下記に集めた質問をされたとき、的確に答えられるだろうか。

 今回はそれぞれの質問について、技術士の國井 良昌氏、山田 学氏にお伺いした。また、記事後半では、技術の森にあった質問を軸に話題を拡大し、欧米での製図記号の読み方について、ソリッドワークス・ジャパン 技術部 水野 哲氏に回答していただいた。

 投稿にある実際の回答と下記の回答とぜひ読み比べてみてほしい。

「技術の森」内の宇都宮 茂氏執筆のレビューも併せてご覧ください。

*本記事内の技術の森の投稿内容の転載につきましては、運営元であるエヌシーネットワークの許可を得ています。



外形線と寸法補助線は接して描かなければならないの?

外形線と寸法補助線の関係で・・えっ!

機械設計、cadで図面を描く場合に外形線と寸法補助線は 接して(くっつけて)描かなければならないものでしょうか。

先日キャリアの長い方との話題の中で「外形線と寸法補助線はつけて描くのが今の常識で 離して描くのは昔のことだから・・」と言われ、離して描くのが常識としてきた私にとっては驚きでした。

jisでははっきり規定されたような文言は見当たらないと思います。私が時代遅れか、その方の企業の規定か、業界規定か、好みの問題か、今のjisでうたわれているのでしょうか… >>続き

 外形線と寸法補助線は接して描くのが正解って本当? ――読者の皆さんは、どうしているだろう? 例えば成形部品の細部形状を描き込んだ場合、補助線の指している場所が分かりやすいように(あるいは描くときに端点を誤らないように)と外形線につなげて描くという人も中にはいるようだ。ただ記者が聞いてみた範囲では、外形線より少し離して描くという設計者が多かった。そうとはいえ、JISの決まり上では、どうなっているのだろう。

 JISによると、『寸法補助線と図形との間をわずかに離してもよい』と記載されています。従って、外形線と寸法引き出し線は、接しても接しなくてもよいということになります。

 製図の場合、外形線は太い実線で寸法補助線は細い実線で描きますが、CADの画面上は線の太さが明確であっても、プリンタの性能によっては太線と細線の違いが分からなくなる場合が発生します。

 設計者など図面を見慣れた技術者にとっては、寸法補助線が接していても、外形形状を区別し形状を読み取るのに苦労することは少ないと思います。 ところが、営業や生産管理など図面を読むだけの立場の人にとって、外形線と寸法補助線の違いがなければ、外形線を区別することが難しくなり、形状を読み取れない状況に陥る可能性があり、寸法補助線が外形線から離れている方が良いといえます。

 明確に、どちらが良いとはいい切れない運用上の問題ですので、社内のローカルルールとして統一するのがよいと考えます。

(回答:ラブノーツ 山田 学氏)

並目の場合はピッチ入れない?

図面上のネジ寸法の表記について

図面上の標準ネジの表記なのですが M6だとM6(P=1.0)と書くのが正解なのか?単にM6と書くのが正解なのか良く解りません 標準ネジだとピッチは書かないのでしょうか?JISではどの様にまとめているのでしょうか?会社で2パターンの上司がいて困っています

 確かに、細目ねじの場合はピッチを記入する。実際、製図で指示するのは並目ねじが多いが、本来そのピッチまで明記するべきなのだろうか?

 回答の前に……「細目」を皆さんは、何と読むだろうか?

 「細目の読み方は、JIS B 0101『ねじ用語』によれば、 “ほそめ”が正しくなります。 ただし、ねじ屋さんでも“さいめ”と呼ぶ人もいるようで、 実際はどちらを使っても良いのではないでしょうか」(山田氏)。

 閑話休題。本題に入っていこう。

 並目のメートルねじのピッチを図面に記載するのは、一般的には少ないと思います。私の経験上、いまだかつて並目ピッチを記入した図面を見たことがありません。ただ、知り合いのベテラン設計者に聞いてみると、書かなくても良いという人と、書いた方が親切ではないかという人がおり、正答はないと私は考えます。

 並目ねじの場合、1つの呼び径に対して1種類のピッチしかありませんが、細目ねじの場合、1つの呼び径に対して複数の細目ピッチが存在することがあります。従って、細目の場合は必ずピッチを図面に記載します。

 私は、並目の場合についてはそのピッチまで書くと細目であると勘違いされるのが心配で、書かない方が良いだろうと判断していました。

 いずれにせよ、社内のローカルルールとして統一するように働きかけるのがよいと考えます。

(回答:ラブノーツ 山田 学氏)

ネジの加工形状の描き方は特に決まりがない?

ネジ加工方法の図示

おねじ・めねじの加工方法(タップ、ダイス、転造、鍛造などなど)の図示に関するJIS規格があったら、教えていただけますか? ハンドブックの機械要素と製図を見てみたのですが、見つかりませんでした。見落としたんでしょうか??

あるいは皆さんでしたらどんな感じで表記してるんでしょうか? うちの会社では注記的に加工方法を図示する人や、M※※とサイズだけ図示する人など玉石混交状態です。

 質問の件まで意識しなければならない場合は、実際、少ないだろう。ただ、加工方法まで書かなくてはいけない状況が今後、ないとはいい切れない。そんなときのために、以下の回答を頭の片隅においておけば、役に立つことがあるかも?

 一般的に図面は出来上がりの部品形状のみを表し、加工機の指定や工程などは生産技術部門や製造部門が図面を見て決定するものです。『JIS B 0122』には、図面や工程表に用いることができる『加工方法の記号』が定められています。代表的な記号の抜粋を下記に示します。

例:F(鍛造) RL(転造) G(研削)CS(砂型鋳造)

PP(プレス抜き) SPED(放電加工) FL(ラップ仕上げ)など

 鍛造や転造の記号はありますが、タップやダイスなどの記号はありません。また、図面上でねじの寸法の後に加工方法の記号『F』や『RL』と記入した場合、これらの記号の知識がなければ読み手は混乱します。

 ただ『加工方法を書くな』という規程もありませんので、特に指定の必要があれば注記として表現するのがよいのではないでしょうか。また、ねじの寸法の後ろに追記する場合は記号を付けるのではなく、日本語で記載すればよいと考えます。

(回答:ラブノーツ 山田 学氏)

「TYP」って何? JISではないの?

(TYP)の裏付け

お世話になります。

先日、顧客の図面中の(TYP)を社内加工図に記入しなかった為、とんでもない物が出来てしまいました。(TYP)=代表で記入するとの意味合いでしょうが、製図関連のJISを見ましたが発見できませんでした。(TYP) 規格等の裏付けのある、一般的な記号なのでしょうか。ご存知の方、宜しくお願いします。

 これは、ちょっと特殊かもしれない……。読者の皆さまは、この「TYP」という表記を見たことがあるだろうか? 少なくともJISや製図の教本には書かれていない表記だが、世の中に流通する機械図面の寸法表記内で、たまに見られることがある。

 初めてこの記号の存在を知りました。私より年配の“これは!”と思うベテランエンジニアの方々にも質問してみましたが、この記号の存在は知らないとのことです。従って、本件についての解答ができないため、ここでは所見のみ述べますことをご了解頂きますようお願いいたします。

 電気部品などでは日本国内メーカーのカタログにもTYPが記載されています。ここでTYPは、『Typical』(典型的な、代表的な)の略語として使用されています。つまり、定常状態での消費電力や電圧・電流などを表すための記号として使用されています。

 機械図面に用いる場合、アメリカのANSIに基づき使われる記号のようですが、実際の図面を見ないと、どのように解釈すべきか残念ながら判断ができません。ご質問の方が実際の解釈として問題ないと判断すれば、日本語の注記として書く方が良いと私は判断します。

(回答:ラブノーツ 山田 学氏)

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