巨大客船も航空機も丸ごとVR空間へ、高速3D CADビュワーのVR対応版が現場を革新:VRニュース
3DVS Japanは、ドイツのKISTERSが開発する3D CADビュワー「3DViewStation」製品ファミリーのVR対応版「3DViewStation VR Edition」に関する記者向け体験説明会を開催した。
3DVS Japanは2019年5月16日、ドイツのKISTERSが開発する3D CADビュワー「3DViewStation」製品ファミリーのVR(仮想現実)対応版「3DViewStation VR Edition」に関する記者向け体験説明会を開催した。
3DVS Japanは、2017年2月にスマートスケープの子会社として設立された企業で、国内における3DViewStation事業に注力する。今回紹介した3DViewStation VR Editionの国内販売は2017年5月15日から開始しており、最新版は「v2019」となる。
高速ビューイングを実現する「3DViewStation」
3DViewStationは大規模アセンブリにも対応したハイパフォーマンス3D CADビュワーで、日本語を含む9カ国語をサポートし、20種類以上の3D CADデータフォーマットを扱える。3DVS Japan セールス&マーケティング部 部長の豊岡英一氏は「欧州を中心に3000社以上の導入実績があり、ユーザー数はインストールベースで1万5000〜2万件程度に上る。大規模アセンブリをストレスなく扱えるため、自動車や航空機といった部品点数の多い製品を取り扱う業界での引き合いが強い。また、API(Application Programming Interface)を公開しており、PLMと連携したシステムの作り込みなども行える」と説明する。ちなみに、3DViewStationの業界別の売り上げ比率は、自動車が70%、産業機械が15%、航空宇宙が10%、建設が5%になるという。
3DViewStationの最大のウリは、高速ビューイングにある。例えば、ダッソー・システムズのハイエンド3D CAD「CATIA」で設計した5.5GBもの大規模アセンブリを開くのに通常約7分かかるところ、3DViewStation独自のファイルフォーマット「3DVS」に変換すると約1秒で表示可能だとする。
3DViewStationの製品ファミリーは、Windows PC上で動作するデスクトップ版の「3DViewStation Desktop」、Webブラウザでデスクトップ版と同等機能が利用できる「3DViewStation WebViewer」、3D CADのネイティブデータを3DVSなどへデータ変換する「Automation Server Batch」、そして、今回取り上げる3DViewStation VR Editionの大きく4つで構成される。
瞬時にVRセッションを開始できる「3DViewStation VR Edition」
3DViewStation VR Editionには、ネイティブの3D CADデータおよび中間ファイルを読み込み、VR空間へ簡単に配置できる3DViewStation Desktopのオールインポーター版(20種類以上の3D CADデータを取り込める権限が付与されたバージョン)が含まれる。また、360度カメラで撮影した画像を取り込み、VR空間の背景(スカイボックス)として利用することも可能で、他にも通常のデスクトップ版で提供される豊富な機能群を活用できる。さらに、APIを使用して、例えばPLMシステムと連携させることで、モデル構造の定義、ポジショニングの定義、メタデータからのアノテーションの追加といった作り込みが可能。表示メニューのカスタマイズなども行える。
ハードウェア環境としては、VRシステムとして「HTC VIVE」および「Windows Mixed Reality」をサポートし、これらが動作するハイエンドなWindows PC環境が必要となる(※ハードウェア環境は別途ユーザーが用意)。
「これまでVRを用いた検証環境を実現しようとすると、大掛かりな設備が必要で、膨大なハードウェアコストがかかっていた。しかし、HTC VIVEのような安価で手軽に利用できるハードウェアが登場したことで導入の障壁が一気に下がった。国内でも製造業を中心にVRを活用した検証やトレーニングといった用途への関心が高まっているため、われわれとしても3DViewStation VR Editionの販売を強化していきたい」(豊岡氏)。国内の導入実績としては、まだこれからという状況だが、某自動車メーカーでの採用(前バージョン「v2018」)が決まり、この勢いに乗りたい考えを示す。
説明会では、APIを活用したシステムインテグレーションの例として、シーメンスPLMソフトウェアのPLMソリューション「Teamcenter」や「Active Workspace」との連携事例を紹介。また、3DViewStation VR Editionの欧州での実績として、パーツ数1000万点以上の超大型客船での活用や大規模研究施設での導入事例を取り上げた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- フル3Dモデルも軽快に操作できる“現場で使える”VR検証ソリューション
ラティス・テクノロジーは、超軽量3Dデータフォーマット「XVL」を活用したVR(仮想現実)検証ソリューション「XVL Studio VRオプション」の提供開始を発表した。 - 指先位置追跡と手のひらへの力触覚フィードバックを融合させた新ソリューション
exiiiは、指先の位置追跡(ハンドトラッキング)と手のひらへの力触覚フィードバックを組み合わせた新たな触覚提示ソリューション「EXOS Wrist Hand Tracking Edition」の提供開始を発表した。 - VR空間にある3Dモデル部品を動かして製品の組み立てや保守作業をバーチャル検証
デジタルプロセス(DIPRO)は、VR(仮想現実)技術を活用し、製品の組み立てや保守の作業性の検証に役立てることが可能なソリューション「DIPRO Xphere」の販売を、2019年4月19日から開始する。 - IoTとAR事業がCAD/PLMを超えるPTCの最大ビジネスになる日も近い!?
PTCジャパンは、米PTC 社長 兼 最高経営責任者(CEO)のジェームズ・E・ヘプルマン(James E. Heppelmann)氏の来日にあわせ、メディアブリーフィングを開催。ヘプルマン氏は、同社主力事業がIoTとARに急速にシフトしつつある現状を紹介した。 - 3D CADで作った3Dデータを生かし切るVRとARの進化
AI(人工知能)と同じく2016年にブームを迎えたVR(仮想現実)。2017年以降、このVRが、製造業や建設業の設計開発プロセスに大きな変化を与えそうだ。AR(拡張現実)についても、「デジタルツイン」をキーワードに3D CADで作成した3Dデータの活用が進む可能性が高い。 - 「VR=仮想現実感」は誤訳!? VRの定義、「製造業VR」の現状と課題
製造業VR開発最前線 前編では、VRやAR、MRの概要、製造業向けVRの他の分野のVRとは異なる特徴、これまでの状況などを説明する。