IoTとAR事業がCAD/PLMを超えるPTCの最大ビジネスになる日も近い!?:VRニュース
PTCジャパンは、米PTC 社長 兼 最高経営責任者(CEO)のジェームズ・E・ヘプルマン(James E. Heppelmann)氏の来日にあわせ、メディアブリーフィングを開催。ヘプルマン氏は、同社主力事業がIoTとARに急速にシフトしつつある現状を紹介した。
CAD、PLMだけじゃない! 急成長するPTCのIoT/AR事業
「もう間もなく、PTCは“IoTとARの会社”と呼ばれるようになるだろう」。2019年3月26日、米PTC 社長 兼 最高経営責任者(CEO)のジェームズ・E・ヘプルマン(James E. Heppelmann)氏の来日にあわせて行われたメディアブリーフィングにおいて、同氏はこのように説明した。
フィジカルとデジタルの融合によるトランスフォーメーションを推進するPTCは、「3D」「ライフサイクル」「統合・調整」「体験」の4つの領域において、ソリューションを展開。具体的には、3Dを中心とした設計環境を提供する3D CAD「Creo」、製品ライフサイクル全体におけるデジタルデータ管理を担うPLMソリューション「Windchill」、さまざまなデータを収集し、そこから洞察を得るインダストリアルIoTプラットフォーム「ThingWorx」、そして近年注力する産業用ARプラットフォーム「Vuforia」を有し、これら強力な製品群により、プロダクト、ピープル、プロセスに対して価値提供を行う。
ご存じの方も多いと思うが、PTCの事業はこれまでCAD(Creo)とPLM(Windchill)が担ってきたわけだが、近年ThingWorx、そしてVuforiaが加わったことで、PTC全体のビジネスが急成長しているという。
「ThingWorxによるIoT事業は、2013年の終わりころから始まったが、2019年度にはPLMビジネスよりも大きくなる見通しで、さらに2020年度になるとCADビジネスも抜き去り、PTCの中でIoTが最大のビジネスとなる」(ヘプルマン氏)。さらに、AR事業についても高い成長率で推移する見込みだとし、PTCにとってVuforiaによるAR事業は非常に重要なポジションにあることを強調した。
こうしたPTCの事業予測を踏まえ、ヘプルマン氏は「これまで、PTCといえば“CADとPLMの会社”で、IoTやARについても一部ソリューションを提供しているという印象だったと思うが、もう間もなく、PTCは“IoTとARの会社”と呼ばれるようになるだろう」と、急速に主力事業がIoTとARにシフトしつつある現状を表現した。
もちろん、IoTやARの活用には3D CAD(3Dモデル)やPLMの存在が欠かせない。主力事業の比率が変化してもIoT、AR活用の源泉となる3D CAD、PLMに対して投資を緩めることはしないという。事実、3D CADに関してはジェネレーティブデザイン技術を有するスタートアップ企業のFrustumを買収したり、ANSYSとの業務提携によりリアルタイムシミュレーション「Creo Simulation Live」を搭載したりなど、Creoの機能強化も積極的に行われている(関連記事:PTCはなぜ設計プロセスにおけるシミュレーション技術の活用に注力するのか)。
技術伝承を支援する「Vuforia」の新ソリューション
今回のメディアブリーフィングでは、急成長する同社AR事業を支えるVuforiaファミリーの新ソリューションとして「Vuforia Expert Capture(旧:Waypoint)」について簡単な説明があった。
同ソリューションは、年次テクノロジーカンファレンス「LiveWorx 2018」(現地時間2018年6月17〜20日)で披露されたWaypoint Labsの技術を基にした製品で、熟練技術者の作業手順を撮影および録画し、それをAR表示して技術伝承に役立てるというものだ(関連記事:熟練技術者の作業をHoloLensでキャプチャー、30分でARトレーニングデータが完成)。
マイクロソフトのARヘッドセット「HoloLens/HoloLens 2」を装着した熟練技術者の作業内容を画像や動画で自動的に記録し、その手順や作業位置などを含めてデータ化する。その後、記録したデータを基に、「Word」などのオフィスドキュメントで手順書を作成したり、補足を付け加えたりし、AR空間を活用した技術伝承や作業トレーニングに役立てる。ARを活用することにより、文章中心のマニュアルから作業内容を把握および理解する必要がなくなり、煩雑な機器操作や組み立て手順などを素早く正確に再現することが可能となる。
なお、Vuforia Expert Captureは2019年4月1日からドイツで開催される世界最大規模の産業見本市「ハノーバー・メッセ」で正式発表され、後日日本国内でも記者発表会が予定されている。
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