2020年前後から、ジョブ型雇用や人事に関する議論が活発化している。転職市場では、任せる職務や必要な能力、スキル、経験を細かく明確にした求人が増えてきている。
例えばWeb、インターネット業界は、コロナ禍以前は裁量が大きいことをメリットとして、サービスの成長や開発、課題抽出まで全てを任せる、業務範囲の広い求人が多かった。しかし、コロナ禍に入ってWebサービスへの需要が高まる中、これからデジタル化を進めようとする業界と採用が競合した。そこで、求職者へのアピールにつながるよう、具体的にどんな仕事を任せるか、今後のキャリアパスがどうなるかを示し、人事制度や採用の進化を図っている。
リクルートが実施した、人事担当者を対象とする「仕事の詳細化に関する取り組み状況」調査では、「取り組んでいる群」の割合は全体の44.0%となっている。
任せる仕事を、求職者に分かりやすく伝えられている企業は、採用が進んでいる。求人の詳細化、明確化についての取り組み状況と、採用の進捗状況への回答を掛け合わせて分析した結果では、「採用できている」の回答割合が最も高かったのは、求人の詳細化、明確化に「取り組んでいる群」で47.0%を占めた。
IT、通信業界でも、キャリアパスなどの具体的な事例を求人票に記す企業が出てきた。求職者にとって、転職後のイメージが湧きやすいことは魅力的に感じられるため、より良いマッチングに向けて詳細化せざるを得ない状況となっている。
また、「男性育休」が注目される中、子どもの誕生や育児を機に転職を検討する男性が増えている。リクルートが実施した「人材マネジメント」をテーマとした調査では、男性従業員の育休平均取得期間は「1カ月〜3カ月未満」(22.8%)が最も多かった。次いで「2週間〜1カ月未満」(21.3%)、「5日未満」(19.1%)だった。
Web、インターネット業界担当のキャリアアドバイザーによると、子どもの誕生や育児を機に転職を検討する男性が増えたことを実感しており、転職を考えたきっかけとして、子どもとの時間を持つ中でキャリアを見直したことや、仕事を含めた暮らしの中で重視したいことが変わったことを挙げる人が多いとしている。転職後の希望としては、「保育園の送り迎えができるよう、フレキシブルな働き方にしたい」「ワークライフバランスを整えたい」などが挙がっているという。
IT、通信業界の企業は、男性の育児休業に関する人材求心策として、オファー面談の際、求職者に育児中の同年代の男性社員と会ってもらい、不安を取り除いてもらうようにすることも多いという。その他、属人的に進めてきた仕事を同僚と共有できるよう可視化し、一時的に人員が欠けても対応できるようにするなど、業務改革を進める動きもある。
各業界のうち、「IT通信」「Web、インターネット」「総合電機、半導体、電子部品」業界における転職者数の推移、転職マーケット割合は以下のようになっている。
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