NECが長く続く低迷から抜け出せないでいます。新野隆社長が2016年4月の就任と同時に発表した「収益構造の立て直し」「成長軌道への回帰」を掲げた中期経営計画は、わずか1年で頓挫。10カ月の空白の後に発表した新たな中計は、「国内で3000人の削減」を柱とするものでした。かつては「電電ファミリー」の長兄といわれていたNECに何が起こっているのでしょうか。
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「E&M JOBS」からの転載です。
NECが長く続く低迷から抜け出せないでいます。新野隆社長が2016年4月の就任と同時に発表した「収益構造の立て直し」「成長軌道への回帰」を掲げた中期経営計画は、わずか1年で頓挫。10カ月の空白の後に発表した新たな中計は、「国内で3000人の削減」を柱とするものでした。かつては「電電ファミリー」の長兄といわれていたNECに何が起こっているのでしょうか。
NECが2001年以降4度目の人員削減に踏み切ります。想定以上に既存事業が落ち込んだことを受け、売上高3兆円、営業利益1500億円を目指していた2016〜2018年度の中期経営計画をわずか1年で打ち切っています。
2018年1月、同じ目標数値の達成を2020年度に先延ばしする新たな中期経営計画を発表しました。その柱となるのが、国内での3000人の人員削減です。NECの2017年度の営業利益予想は600億円。目標達成にはここから900億円上積みしなければなりませんが、このうち600億円はリストラをはじめとする構造改革で捻出する方針です。事業成長で生み出す利益は300億円にとどまっており、まさにリストラ頼みの中計となっています。
NECの業績は下降の一途をたどっています。売上高は2000年度の5兆4097億円を頂点に減少が続いており、2017年度は2兆8300億円とピーク時の約半分に落ち込む見通し。営業利益も00年度(1852億円)の3分の1を下回る予想です。
NECはこれまでもリストラを繰り返してきました。PV事業で営業損失を計上した2001年に4000人、2002年に2000人を削減し、2012年には収益力の改善を目的に1万人のリストラを実施。この間、不採算事業の切り離しも進めており、かつて世界一を誇った半導体事業を皮切りに、PC事業、携帯電話事業、インターネットプロパイダ事業を相次いで切り離しました。経営をスリム化し、残った事業に集中することで収益力を高めることが狙いでした。
2010年に携帯電話・半導体事業を手放し、2011年にはPC事業、2014年にはインターネットプロパイダ事業を相次いで切り離している。2017〜2020年の間に車載電池・小型蓄電池事業を手放す見込み。NECの売上高は、2012年を除き2009年〜2016年にかけて落ち込み続けている。営業損益率は、2009年の1.4から2014年に4.4まで回復したものの、2016年には1.6でした。
ところがフタを開けてみると、09年度以降一貫して目標に掲げている「営業利益率5%」を達成した年度はゼロ。一時は改善も見られたものの、2016年度は1.6%まで落ち込みました。日立製作所(6.4%)や富士通(2.9%)と比べても収益力の低さが目立ちます。
残った事業のうち、NECの祖業ともいえる通信業者向けにネットワークインフラを提供するテレコムキャリア事業は、3年連続で減収となる見込み。2012年の開始当初は「NECグループを支える新たな柱にする」としていたスマートエネルギー事業も赤字に陥っています。事業の切り離しはまだ続きます。
採算が悪化したスマートエネルギー事業では、小型蓄電システムの開発と製造から撤退して止血を図る方針です。2018年3月には車載電池の開発・販売を行う「オートモーティブエナジーサプライ」と、そこに電池用電極を供給する「NECエナジーデバイス」の売却を予定しています。
こうした構造改革のあとNECに残る主な事業は以下の4つです。
IoTやAIなどを活用したサービス面を強化することで、これらの事業を成長軌道に乗せていく方針です。
NECが今後特に力を入れていくとしているのが、セーフティシステムのグローバル展開です。新中計では、構造改革で捻出した資金を使ってM&Aにも積極的に取り組むとしており、2018年1月には英国のITサービス企業ノースゲートの買収を発表しました。特に行政基盤や住民サービスに注力することで、20年度には同事業の海外売上高を2017年度の4倍の2000億円まで引き上げることを目指しています。
セーフティシステムの中でも強みとなるのが、米国立標準技術研究所が行ったテストで世界一の性能評価を獲得した顔認証システム。米国のジョン・F・ケネディ国際空港やユニバーサル・スタジオ・ジャパンなど国内外で導入されており、今後の販売拡大に期待がかかります。
リストラを不採算事業の売却を繰り返すNECですが、今度こそ、残した事業を成長させ、収益基盤を立て直すことができるのか。向こう数年が正念場となります。
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