続いて「転職回数が増えると転職は難しくなるのか」を調べた。転職回数の分布を性別、年齢別に見ると、転職経験者は男女ともに年齢が高くなるにつれて増えていた。男性は転職回数「0回(転職経験なし)」が全ての世代で最も多かったが、女性は男性に比べ転職回数が多い傾向が見られた。「40歳以上」の女性に限ると「5回以上」が最も多かった。
転職回数の多寡と転職確率の関係は、「男性の正規雇用者」「女性の正規雇用者」ともに、転職回数が多い人ほど1年以内に転職する可能性が高いことが分かった。「無業者」の転職確率は、統計的に有意な結果が出ていない。こうしたことから、転職回数が多くても転職の妨げにはなっていないと言えそうだ。
「転職による正規雇用への転換は難しいのか」について、15〜59歳の非正規雇用者の各翌年の就業状態を見ると、非正規雇用から転職を経て正規雇用になった人の割合は1.7%だった。また、自ら希望しているのではなく「不本意ながら非正規雇用として就業している層(不本意非正規)」では、転職で正規に転換した割合が2.8%だった。非正規雇用者のうち、同一企業で正規雇用に転換した「内部で正規転換」は4.9%、「不本意非正規」でも6.7%にすぎなかった。「転職による正規雇用への転換は難しい」は、都市伝説ではなさそうだ。
次に「女性の方が転職は難しいのか」を調べた。転職による雇用形態の男女差を検証したところ、15〜59歳の転職者の前職退職理由は、男性よりも女性の方が「ライフイベント」によって退職した人が多かった。
転職後の雇用形態の割合を見ると、転職後に正規雇用として働いている人は、男性68.2%、女性40.5%となっており、30ポイント近い差が生じている。
15〜59歳の男女のうち「前職が正規雇用」だった人に限定すると、「正規雇用に転職」する男性は69.4%、女性は50.2%となり、その差が約20ポイントとやや縮まった。さらに「15〜59歳で前職を正規雇用で働いていた男女」から「前職の離職理由がライフイベントである人」を除くと、正規雇用として転職する割合の男女差が15ポイント弱に縮小した。
年齢を15〜34歳に絞った場合は、正規雇用として転職する割合の男女差は約10ポイントとさらに縮小した。しかし、いずれの集計方式でも、転職によって非正規雇用になる割合は、男性より女性の方が高かった。
次に「現職よりも大規模な企業への転職は難しいのか」を調べた。企業規模の状況を前職、現職ともに「正規雇用で働いている人」に限定して調べると、「前職より規模の大きな企業へ転職した人」は、前職の従業員数が「1〜99人」の場合が31.6%、「100〜299人」は30.4%、「300〜999人」は22.3%だった。逆に「前職よりも規模の小さい企業へ移動した人」は、「100〜299人」が40.5%、「300〜999人」が50.8%、「1000人以上」が57.9%となり、転職で規模の小さな企業に転職した人の方が多かった。
専門職の中でも仕事内容が規格化された職種では、小規模から大規模の企業に転職する可能性があることを踏まえて、同職種で転職した場合に限定して「1000人以上規模の企業に移動した割合」を見た。その結果、従業員数「1〜99人」から「1000人以上」の企業に移動した「事務職」は5.6%、「専門職」では6.7%、「IT関連職」は11.6%となっている。「IT関連職」は、他の職種に比べて、「100〜299人」の企業から「1000人以上」の企業に移動した人の割合も高かった。
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